08
肉が柔らかくなるように、きつい締め付けが徐々にフィットし始めてきた。愛液がローションの役目を果たし、ヌチャヌチャとした潤滑油の音が聞こえた。
それに呼応するかのように、伊織の声も艶を帯び始めた。我慢できずに漏れ出したような吐息を含んだ声を耳で楽しみながら、圭介は抽送を続けた。
「いい締め付めつけだ」
先端にピリピリとしたむず痒さにも似た気持ちよさが感じられた。圭介は伊織の白い尻をぺチンを叩いた。
「あんっ、お尻を叩かないでください」
労をねぎらうかのように軽く叩いたつもりだった。その瞬間、明らかに女性器の中で変化が起きた。キュッと締め付けられたのだ。しかも不快な締め付けではない。
よく、アダルトビデオでは背後から性交をすると男が女の尻を叩いているシーンがある。馬に鞭を入れるものかと圭介は思っていたのだが、どうやら“こういうこと”らしい。
圭介は口角を吊り上げると、もう一度、今度は先ほどよりも強めに叩いた。
「ああん! た、叩かないでください。そんな馬じゃないんですから」
言葉では止めてくれと言っている伊織だが、女性器の変化はもはや疑う余地はなかった。この女は真正のマゾヒストだ。痛みを与えてやることで、快楽を覚えるタイプなのだ。
「そう。でも、お尻を叩いたら締め付けがすごくなるんだけどな」
「そ、そんなことはありません。き、気のせいです」
自分でももしかしたらわかっているのかもしれない。そう思うと、悪戯心がフッと湧いて出た。
「じゃあもう一回」
三発目は一番手応えが合った。音も肉と肉がぶつかり合う音がはっきりと聞こえた。繋がっている状態で、これが精一杯の強さだった。
「ぎゃあん!」
伊織の身体が馬のように跳ねた。圭介は落馬しないように――繋がったままの体制を何とか崩さなかった。
「た、叩かないでください……痛いですぅ……」
恍惚とした表情から一変、苦痛に顔を歪ませる伊織を見て可哀想だと思う反面、どこかその表情には期待をしている節も見えた。人としての本能とマゾとしての本能が交錯しているというのだろうか。
しかし確実に女性器は奥底から滾々とした泉を沸き立たせている。圭介はもう一度手を振りかざした――。
「やあん! い、痛いのに気持ちいいよ……伊織、変になっちゃった……変になっちゃったよぉ」
やはり、圭介の思った通りだった。痛みが快楽に変わるのだ。圭介のアドレナリンは伊織の愛液に負けじと一気に出始めた。
「ああん! ああん! ダメェ、感じちゃう、こんなことおかしいのにっ」
「おかしくない。おかしくないぞ」
抽送をしながら尻を叩く。真っ白だった伊織の尻は、みるみる赤く染まっていく。
それに従うにつれ、ピリピリとした快楽は大きな波となって圭介を襲った。
「ううっ、もうダメだ、で、出る」
「出して! 伊織の中に出して!」
言われるがまま、波に飲まれるように圭介は欲望を伊織の中に降り注いだ。