03
絵梨花と別れ、教室へ向かっている最中だった。廊下で未央奈とすれ違ったのは。
この前の一件があってからというもの、未央奈を苦手としていた圭介は軽く頭を下げて通り過ぎようとした。が、進路を塞がれてしまった。
「どうして来なかったの?」
どうして来なかった? 唐突な未央奈の質問に圭介は首を傾げた。
「ごめん。質問の意味がわからないんだけど」
「テストの打ち上げ。みなみと君の友達の」
そこまで言われて、合点がいった。
「ああ、その日は先に予定が入っていたんだ。和也からも聞いてるでしょ」
生徒たちが自分たちを追い越していく。大半の彼女たちは自分たちのことになど興味を示していないが、中にはどんな会話をしているのか気になっているのか、ジロジロ見ていく者も少なくなかった。
「待ってたのに」
「そんなことを言われても」
運命の日だった。あの一件で互いに傷つき、そして結ばれたことは皮肉だった。
「みなみと彼氏の子がさ、いい雰囲気になっちゃって」
「ああ、仲間外れにされたってこと」
確かに三人で遊ぶというのは、仲間外れを生む可能性を孕んでいる。まして、みなみと和也は恋人関係だ。未央奈が外れるのは当然といえるかもしれない。
「仲間外れ? そう、かもしれない。最初はみなみとあの子でしてたから」
「してた? してたって、何を」
圭介は、和也から誘われたときの言葉を思い出した。確か「お前もチャンスなのに」と、残念がっていたと記憶がする。意味深な言葉に引っ掛かりを覚えたが、絵梨花のことの方が重要で、追求はしなかった。
「わかるでしょ。3P」
「さんぴー?」
言われて圭介は一瞬何を言っているかわからなかったが、すぐに理解した。みなみと和也、そして未央奈の三人でセックスをしていたのだ。
意味がわかり、言葉を失う圭介に未央奈は恥ずかしそうに頬に貼り付いた髪を直すと顔を俯かせた。
「本当ならそれぞれの組でするっていうみなみとの手はずだったの。で、ある程度したらパートナーを変えて……」
そうなると、必然的に圭介の相手は未央奈となる。
「本気で? 本気でそうしようと思ったの?」
未央奈はコクンと頷いた。圭介は顔をしかめた。
「前にも話したよね? 生理前はムラムラしちゃって部活でも発散できないって。テストも重なって、部活も出できなくて、気が狂いそうだったの……」
スカートの裾を摘み、キュッと唇を噛む未央奈を見ながら、圭介はどう反応をしたらいいのかわからなかった。これはチャンスを失ったということだろうか。
こんなチャンス、滅多にないどころか自分の人生にはありえないことだと思っていた。だが、そのチャンスは以外にも巡ってきたのだ。
「みなみの彼氏の子、あなたより上手かったけど、違ったの。身体の相性が合ってないっていうか。で、思ったの。『ああ、北野君がいてくれたらな』って。それでね――」
顔を上げた未央奈の頬は赤みを帯びていて、目元は潤んでいた。
「付き合って欲しいの。私と」