02
彼女の家で過ごすのだから、天候はあまり関係なかったが、それでも圭介は日曜日が晴天に恵まれることを祈った。天気予報を祈るような気持ちで見続け、迎えた当日。圭介の願いが通じたのか、空は快晴だった。
天気にも恵まれ、久しぶりに圭介はウキウキとした気持ちで家を出た。告白や伊織の件はまだ心に巣食っていたが、いざこの日を迎えると小さく萎んだ。
自転車を颯爽と漕ぎながら、圭介は道中コンビニへ寄った。手ぶらで彼女の家に行くのも気が引けたから、適当に飲み物と甘い物を買った。
絵梨花とは彼女の自宅で待ち合わせをした。道に迷わないか彼女は心配していたが、圭介の頭の中には彼女の家までのルートが鮮やかに描かれているので、何一つ間違えることなく彼女の家までたどり着いた。
前にも見た瀟洒な家。いざインターフォンを押そうとすると、緊張感が圭介を襲った。震える手でインターフォンを押すと、やや間があって応答があった。
『はい』
インターフォン越しからでもわかる。彼女の声だ。圭介の胸はドクンと跳ねた。
「あっ、北野です」
『はい。今開けるね』
そう彼女が言うと、インターフォンがガチャリと切れた。まるで恋人の家に来たようだ。
いや、結果次第でそんな関係になることだって可能じゃないか。穏やかな空模様に反して、圭介の心はさざ波だっていた。
「どうぞー」
玄関の扉が開くと、絵梨花の顔が見えた。サッと上から下まで品定めをするように見ると、彼女は私服姿だった。学校がないのだから当たり前なはずなのに、圭介には新鮮に見えた。
「生田さんの私服姿初めて見ましたよ。似合ってますね」
白いワンピース姿の彼女は、とても清楚で気品がある。彼女に似合っているというよりは、彼女に着てもらいたくて生まれてきた物にすら見えた。
「ありがとう。さっ、狭い家かもしれないけど上がって」
「お邪魔します」
絵梨花に促され、圭介は玄関に足を踏み入れた。北野家よりも広い玄関は何種類かの靴があるだけで、スッキリと片付けられていた。
「あの、これ買って来ましたので、よかったらどうぞ」
リビングへ通されると、圭介はコンビニ袋を差し出した。
「そんな。気を使わなくていいのに」
「いえ。せっかく招いていただいたのですから。もらってください」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
圭介からコンビニ袋を受け取った絵梨花は、「あっ」と声を上げた。
「どうかしました?」
「これ。美味しいよね。私、好きなんだ」
絵梨花がそう言って取り出したのは、適当に選んだ甘味物だった。確か、日奈子が美味しいと言っていたのを思い出し、カゴに入れたがまさか彼女の好物だったとは。思わぬ産物に圭介はほくそ笑んだ。