01
2学期の始業式の後のHRを終えて、荷物をまとめていると、入り口のドアから不意に名前を呼ばれた。
見るとそこには佐藤先輩と久保先輩が立っていて
「蒼!ちょっと来い!」
「いやちょっと・・どうしたんですか?」
俺が近づくと、頭の上に1枚の封筒を乗せられた。
「なんですかこれ?」
「まぁまぁ中見てみろ!」
奇妙な笑みを浮かべた先輩達、言われるがまま封筒を開くと、そこには『第14回サンシャインフォトコンテスト人物部門〈優秀賞〉井上蒼様』
「え?これ、ホントに?」
書類を二度見してから、顔を上げると、「田中ちゃんが焼き肉おごってくれるってよー」と佐藤先輩は二カッと歯を見せて笑った。
「はぁー、悔しいけどさ蒼の写真すげーいいもん、惹き付けられたわ」
佐藤先輩は外国人並みのお手上げポーズをしてみせて、それからちょいと指で俺を招く。そして久保先輩には聞こえないようにとんでもないことを言い出した
「彼女・・・おまえにめちゃくちゃいい表情するのな。そりゃ蒼が惚れるわけだわ」
顔が熱くなるのを悟られないように封筒で隠す。だけどどうせバレてるから開き直ってみる
「でしょ!」
「ははっ、可愛いやつめー」
入賞できるなんて思ってもみなかったし、ましてや優秀賞なんて、まだ信じられない、先輩達と別れてから人がまばらな教室で俺は静かに興奮を抑える。封筒の中の書類を見直すと、入賞作品は展示会場に1ヶ月展示されるようだった
保乃は・・・
勝手に応募してたこと知ったら、なんて言うだろうか
間違いなく怒られるだろうな、恥ずかしいって
でも恥ずかしくない
あの写真は、間違いなく俺の目から見た彼女の全てを物語っているから。俺は、荷物もそのままに教室を飛び出した。久しぶりにこんなに走ったっていうくらい真っ直ぐに体育館を目指した。
「保乃!!」
部活の休憩中で飲み物を飲んでいた保乃を大声で呼んだ。
「っえ?蒼?」
驚く保乃。そりゃそうか俺学校でこんなデカい声を出した事なんてない。だから近くに居た部員も振り向いて俺と保乃を交互に見ている。
「ちょっ、どうしたの、みんなびっくりしてるじゃん」
保乃は俺の方に駆け寄ってきて気まずそうに俺を見上げた。それもそのはず俺たちが顔を合わせたのは先週家で保乃に逃げられたあの夕方以来だったから
「部活中にごめん、今度の部活の休みいつ?」
「え?・・・明後日だけど」
「じゃーその日ここに来て欲しい」
俺はルーズリーフの切れ端に殴り書きした、展示会場の住所を保乃に手渡した。
「時間は保乃に会わせるから、後で連絡してよ。邪魔してごめん、じゃ頑張れよ」
「え?は?待ってよ」
後ろから保乃の焦った声がして振り返る。
「一生のお願い!たまにはさ俺のも聞いてよ」
両手を合わせてお願いのポーズをすると、目を丸くしてこっちを見てる保乃に俺は小さく笑い返した笑い返した。もうあれこれ考えるのはもうやめた。この気持ちをちゃんと伝えよう。茶化されてもごまかさないまっすぐぶつかって、だってまだ本当の一番大事な一言を伝えられていないから