03
「おいしい?」
「うん・・うまいよ」
「そっか・・・よかった」
カレーを頬張る俺の前の椅子に座った保乃が、両肘をつきながらこちらを見てる。いや見てるというよりかは凝視されてる
「えっとー何?・・そんなに見られると食いづらい」
「いや、別に」
俺が食べるのを止めてそっちを見ると保乃はパッと顔を背けた。言葉とは裏腹に何か言いたげな様子で髪の毛を触ったりテーブルの木目をなぞったりなんかしている。こういう癖は昔から変わらない。
「なんだよ。どうかしましたか?」
しばらく黙り込んでいた保乃が、ようやく意を決したように口を開いた
「今日ってさ・・いろんな部活の写真撮ってたの?」
「え?あーまぁうん」
「・・・陸上部とかダンス部とかも?」
「うん」
「・・・・・」
「え?それだけ?」
「だから・・・鼻の下伸ばしながら女子の写真いっぱい撮ってたんだなーって思ったの!」
「は?先生に頼まれてやっただけで、ってか鼻の下なんか伸ばしてねーよ」
「嘘だ、うちの部の子と話しているときデレデレしてたじゃん」
「いやいやしてないって」
俺がそう言うと、ツンッとそっぽを向いた。あの時まさか見られているとは・・それよりなにその態度。こんなの誰が見たって
「何?ヤキモチ?」
「なっ!なんで蒼に!」
俺の言葉に保乃がカッと顔を真っ赤にさせながら勢いよく立ち上がった
「いや・・そういう風に聞こえたからさ」
「違うっ!だって私たち」
「幼なじみだろ、ただの」
「そーだよ分かってるのにからかわないでよ」
「からかってないから・・・俺は本気だよ!」
思わず声を荒げてしまって保乃がびくんと肩を震るわせる。
「ほっ、ほんきって」
「保乃の気持ちが、ヤキモチだったらって本気で思ってるよ」
俺は椅子から立ち上がって、保乃のそばに歩み寄って、後退りする保乃に構うことなく俺はその小さな手を取ってぎゅっと握った
「この前・・・教室で俺がこうしたとき嫌だった?・・なんとも思わなかった?」
「・・・・え?」
「保乃が・・昔から俺のこと、ただの幼なじみとしか思ってないことも、難の意識もしてないことも知ってる。でも・・・俺は違うんだよ」
保乃は黙ったまま、俯いて、俺に握られた手をじっと握っている。俺はその手にほんの少し力を込めて、俺は頭1つ分の距離にいる保乃を静かに見下ろした。10年近く前は保乃の方が俺より大きかったのに、身長も手の大きさもいつの間にか俺が追い越して、こんなに差がついていたなんて知らなかった
「幼なじみじゃなくて、ちゃんと1人の男として・・・保乃の目に映りたいってずっと俺は思ってたよ」