07 遠藤さくらside
今日の私はなんだか変だ。夏の熱にやられたみたいに、駅に向かう途中に先輩を見てから、お祭りのせいにして先輩と手と繋いで、食べかけのみたらし団子だって、でも先輩を見ていたら私はただの後輩でしかないと告げられいるようで「好きです」そう伝えたら戻れはしないのだと。分かっている。
高揚する気持ちは、やはり花火のように消えていった。
蒼先輩を好きになったのは、高校に入学したすぐの頃だった。
廊下の掲示板に貼ってあった写真部のポスターの桜の写真。すごく綺麗で、でもどこか寂しくてその写真を撮った人が気になって、部室に行ってみると、別にすごくかっこいいわけでもなくて、あまり話しかけられることもなくて、でも楽しそうにカメラの手入れをしたり、部室の窓から外を見るその横顔がいつの間にか好きになった。
前に写真部に入部してすぐの頃、佐藤先輩に聞いた話に「蒼ってな、全然人物を撮らないんだよなーたぶんだけど好きなやつがいてその子を撮りたいんだろうなー、いっつも外見てるし」なんて言われて、私はたぶんこの時に間接的に振られた。だから、今日先輩に告白するなんて自分が一番驚いた。
はぁー
先輩の前から走って神社の鳥居まで気づいたら逃げていた。「もう蒼先輩に会えないや・・」そう思うと自然と涙が出そうになった。
「大丈夫?」
声のした方を見ると、浴衣姿の女の人が立っていて、近づいてくるとなんだか見覚えのある人で「えっとーバレー部の」確か夏休み前の全校集会で、何か選ばれたって言われて前に出ていた人だと思い出す
「え?もしかして同じ高校?」
「1年の遠藤さくらです」
「さくらちゃんね、田村保乃です!」
田村先輩の顔を見ると、なぜかそのふんわりした雰囲気に出そうになった涙は少し落ち着いていた。それでも今日初めて話したのに田村先輩はなんども「大丈夫?」と聞いてくれて私はいつの間にか先輩に今日のことを話していた
「そっかー振られちゃったかー、でもさくらちゃんを振るなんてそいつ本当に見る目がないなー、たぶん変わってる奴なんだよ」
私の横に座る保乃先輩は、ずっと優しく声をかけてくれる。まるでお姉さんみたいで。まだ少ししか話していないのに素敵な人だと分かる。
「そうなんです、ちょっと変わってて。でもすごく優しくて、でも先輩のおかげでだいぶ落ち着きました。ありがとうございます!」
「よかったー、さくらちゃんこんなに可愛い浴衣着て泣いてたらだめだよ」
「はい!あっ保乃先輩は大丈夫ですか?彼氏さんとか・・・待ってるとかじゃ」
「あ!友達と来てたんだけど、はぐれちゃって、でもスマホの電池なくなっちゃって、で花火始まったから、もういいや見ようってなってたの」
「そうだったんですね」
「さくらちゃん知ってる?さくらちゃんがいた神社の奥にね道があってそこを抜けると階段があって、そこから花火がよく見えるんだー」
保乃先輩の口から出た場所はさっきまで私と蒼先輩がいたところで、保乃先輩がさっき蒼先輩が言ってた好きな奴なんだと気づいた。
保乃先輩を見ていると、蒼先輩が好きになった訳が分かる。2人は私から見ても、お似合いだ。
私の初恋は夜空に光る花火のように散ってなくなった