スマイル - 3 それはきっと
02
「それよりさ、なんで保乃家に居るんだよ?」

「だって、今日お父さんの命日でしょ。お線香あげにきたんだよ」

「ああ、覚えてくれてたんだ」

「もちろん」と俺の方を見る保乃。俺の父さんがなくなってそういえば今年で10年が経つ。保乃は毎年こうやって命日には仏壇の前に会いに来てくれる。保乃は昔から父さんに懐いていたし、小さい頃から兄姉のように過ごしてきた保乃にとっても第2の父親みたいな存在だったんだろう。




今でも覚えている。父さんが死んだとき、母さんは声にならない声で泣き崩れた。小学生の俺にとっては、そんな初めての母さんの姿を見て、頭では理解していても気持ちなんて簡単に追いつかなくて病院でも泣けずにいた。

あとから親戚から聞いた話、まるで人形のように表情を失って、ただただ呆然としていたらしい。そんな俺にずっと離れずついていたのが保乃だった。保乃は何を言わずに、涙を抱えてずっと手を握ってくれていた。家に帰っても保乃は俺のそばから離れようとしないで、そこでようやくたまりにたまった涙を流しながら俺にしがみついて泣いた。

「蒼には・・・私がいるからね」


たった一言


その言葉を聞いた瞬間、初めて止まっていた感情が溢れてきて、俺は大声を上げて泣いた。あんなにも人前で泣いたのは、あの時だけだった。心にぽっかりと空いてしまった大きな穴を必死にふさぐように保乃の小さな手を握って。


あの日から

保乃は、俺にとって今まで以上に、特別な女の子に変わっていった。





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about5 ( 2020/01/29(水) 22:35 )