3 それはきっと
01
「もう、あおいー、早く早く、遅れちゃうよー」

真新しい大きな真っ赤なランドセルを揺らしながら、俺に向かって手招きをする女の子

あれ?
なんだこれ?

「保乃ちゃん、まってよー」

そういう俺も、気がつけば、黒いランドセルを背負っている。よく見れば、ここは懐かしい小学校へ向かう通学路、キョロキョロと周りを見ているうちに、保乃はもう随分遠くに走って行ってしまった。

そういえば、俺っていつから保乃のこと呼び捨てで呼ぶようになったんだっけ。小学生の俺から自然と発せられた懐かしい響きに少し恥ずかしさを感じながら俺は保乃の背中を追う。

「待ってよ、保乃ちゃん」







「・・・イ、ねぇ蒼ってば」

「ん・・・?」

肩を揺さぶられながら、名前を呼ばれて、急速に引っ張り起こされる。

「・・・うわ!」

机に突っ伏したままの状態で寝ていた俺は、驚きのあまり、のけぞって椅子ごと派手にひっくり返ってしまった。

「え?ちょっと何してんのー蒼」

ゲラゲラ笑いながら俺を見下ろしているのは、案の定、いつもの保乃で、さっきのが夢だったて気づく。

「いってぇー、何してんのって俺の台詞だわ」

目を覚ました瞬間、びっくりするくらい至近距離に保乃の顔があったらそりゃこうなる。まるで分かっていない保乃のおでこにデコピンをかましてやった

「いったー女の子に手あげるとか蒼サイテー」

「大げさなんだよ、保乃は」

本当に、軽く当てただけなのに、いつまでも痛がる保乃、まるで子犬みたいなやつ。そんな保乃を見ていたらクスッと笑いが溢れてきて、俺は気づいたら保乃のおでこに手を伸ばしていた

デコピンしたところを撫でてやると、保乃は目を見開いて、キョトンとした顔でこっちを見てくる。


あれ?


今俺・・・けっこう大胆なことしてたりします?


さっきまで小学生の頃の夢を見ていたから、あの頃のように無意識に触れてしまった。途端に恥ずかしさがこみ上げて手を引っ込める。


「悪い・・」

「もしかして蒼、寝ぼけてる?」

「・・・そうかも」

最近の俺はどうにかしている、保乃との距離がおかしくなっている。今の関係では、もう俺の方が居られないかもしれない、そう漠然と感じた。


about5 ( 2020/01/27(月) 21:10 )