テスト前
「はーい、ほんなら今日はここまでやな。今度テストやからここらはしっかり復習してや?はい、解散。」
山本先生の日本史の授業は終了、優希はあの後トイレに行ったきり帰って来なかった。
(優希君帰って来んかったやん…ちょっと心配やわ。)
山本先生も不安そうだった。逆に悠太は…
(あの野郎サボりやがったな。ちくしょー、今日は俺の独壇場になっちまったじゃねえか全く…)
すると…
(戻って来やがった。)
何くわぬ顔で優希が教室に戻って来た。
「ちょっと来い優希。」
「ん?どうした?」
「テメェどういうつもりだ?」
「いやー参った参った、急に腹痛くなってよ…」
「それはいいが、何でこんなに遅いんだよ?」
「俺だってサボりたくてサボったんじゃねえよ。マジで、戻ろと思ったら腹痛なってさ…」
「先生心配してたぞ?」
「だろうな…」
優希は申し訳なく思った。次の授業は優希は退室することなく最後まで聞いてた。そして授業が終わり…
「みんなー、いよいよ来週からテストだから気を抜かないように…いい?特に悠太君いいかしら?」
「ちょっと先生、何で俺なんですか?」
「先生は悠太君のことを思って言ってんだから…」
「大丈夫ですって…」
「どうかしら?それから優希君。」
「はい。」
「山本先生の授業サボったみたいだけど…」
(山本先生から聞いたのか?ほんとに腹痛くなっただけなんだけどさ…)
「いやサボったんじゃなくて、急に腹痛くなって…戻ろと思ったらまた腹が痛くなってしまって…別にサボろうと思ってサボったんじゃないです。」
「ふ〜ん…」
(まぁ疑われても仕方ねえか…)
「とにかく、今は大事な時期だから授業を途中で抜けないようにね?」
「はーい。」
「じゃあ明日も元気に来てね。」
授業が終わり、ゾロゾロと帰って行く生徒たち…
「優希今日一緒に…」
「悪りぃな今日ゆっくりしてる暇ねえんだ。美音が『早く帰って来て。』って言ってたもんでさ。」
「仕方ねえな、やっぱお兄ちゃんだな。」
「うるせえよ、じゃあな。」
優希は急いで帰った。
「暇だなぁ…ま、何もすることねえし、道草食って帰ろっと。」
一方優希は早足で家に向かっていた。
(多分大丈夫だと思うけど、油断してるとあいつのことだから…)
今にも美音の膨れた顔が浮かんでくる…
「お兄ちゃんのバーカ!」
(だめだだめだ気にすんな俺…)
いつもはゆっくり帰る道も、今日は余所見なんかせずにただ真っ直ぐ家に向かって帰る。ようやく家が見えてきた。と…
(ん?家の前に車が…誰のだ?)
優希は車の中を見る。誰のか全くわからない。
(親帰って来たのか?)
優希はそう思いながら家に入る。
(ん?これは…)
玄関には明らか見たことない靴が…優希はすぐに自分の親ではないと察した。
(こんな綺麗な靴…もしかして指原先生?いやいや、先生だったら何かしら連絡あるだろうし…誰だ?全くわからない。)
少々不安になりながらリビングに入った。するとそこにいたのは…
「お兄ちゃんおかえりー。」
「ただいま…」
「ねぇついさっき先生が来てさ…」
「先生?」
「あれ?優希君帰って来たん?お邪魔してるで?」
「え…何で?」
何と家には山本先生がお邪魔していた。
(どういうこと?)
優希はわけがわからなかった。