第1章
久しぶりの甘え
優希は急ぎ足で家に着いた。

「ただいま。」
「お兄ちゃんおかえり、遅くない?」
「悪りぃ悪りぃ…」
「なんかあったの?」
「まあね…ほら美音…」
「ん?」

優希は美音にキスした。

「あ…」
「朝の約束だったからな。」
「覚えてたんだ…」
「何だよその言い方、忘れて欲しかったのか?」
「忘れてほしかったのに…」
「はは…えーと、忘れてたら何だっけ?」
「明日の朝からずっとチュー。」
「それはごめんだからな。忘れて無くて良かった。」
「ちょっとがっかり…でも、覚えてくれてて嬉しい。ありがとお兄ちゃん。」
「ごめんな美音…そうだ、兄ちゃんに甘えるか?」
「え…いいの?」
「ああ、いつも我儘聞けてないからな、またしばらく出来ないかもしれんし…」
「やったー!でも、お兄ちゃん荷物…」
「そうだな、ちょっと待っててな。」

優希は急いで階段を上がり、自分の部屋に荷物を置くと、すぐに下りてきた。

「さ…リビング行くか?美音…ほらよ。」
「わっ…お兄ちゃん恥ずかしいよ…」
「なんだ、嫌か?」
「ううん…嫌じゃない。甘えていいもんね?」
「もちろんだ。」
「ずっとこのままいたいな。お兄ちゃんと。」
「わかった。じゃ、リビング行こうか。」

美音をお姫様だっこし、優希はリビングへ…ソファに座っても美音はお姫様だっこされてるまま…美音の顔はニヤニヤしていた。

「えへへ…」
「何だ?」
「久しぶりだから。お兄ちゃんにだっこされたの…」
「そうだろ?たまにはこんなことしねえとな、美音のことだし拗ねるからな…」
「うん。でも、たまにだったらいいよ。お兄ちゃんも忙しいときあるもんね?」
「まあな。こういうときしか出来ねえけど…ほら美音…」

優希は美音の頭を撫でた。美音は優希に凭れかかった。

「お兄ちゃん…」
「ん?どうした?」
「寝てきそう…」
「眠いのか?風呂入んないとあかんからなぁ…」
「ううん…」
「じゃ、先入って来い。その後兄ちゃん入るから、そんで今の続きしたらいいだろ?」
「うん。じゃ、入る。」

美音は風呂場に向かった。

(美音には迷惑かけてばっかだからな…こういうのも必要だからな…たまにはね。)

美音が入ってる間、優希は何もすることがなく、テレビを見てた。と…電話がかかってきた。

「ん?電話だ。誰だ、もしもし…」
《よっ優希!》
「悠太か?どうした?なんか用か?」
《もう帰ってたか。まだ学校に居るかと思ったけど?》
「ずっと居るかよ、馬鹿にしやがって。」
《で、居残りどうだったんだよ?》
「別に、ただ注意されただけだ。それがどうした?」
《な〜んだ…つまんないの。てっきり退学かと思った。》
「ばーか、そんなんで退学だったらごめんだ。」
《ま…詳しいことは後日聞くわ。じゃ…》
「いちいちこんなん電話すんなよな…ったく…明日聞きゃいい話だろ?」

優希は少々イライラしながら受話器を置いた。

「お兄ちゃん誰だったの?」
「美音出たか。ああ…電話の相手は悠太だよ悠太。」
「悠太さんか…お兄ちゃんいいよ風呂。」
「わかった。美音待ってな、寝んなよ?」
「うん。でもちゃんと洗ってね?」
「わかってる。」

優希は風呂場に向かった。

夜明け前 ( 2019/08/28(水) 21:04 )