第1章
裏校則
指原先生に居残りと言われ、優希は悄げて教室に戻って来た。それを見た悠太は冷やかしに来た。

「よっ、お呼び出し!」
「うるせー!」
「で、結果どうだったんだよ?」
「今日居残る事になっちまった…」
「あはは、居残りかよ。お疲れです!」
「疑わしい感じのを撮られちゃったらなぁ…今日早く帰れると思ったのに…」
「ま、頑張れ優希!」
「くそ〜…こういうのは、悠太がお決まりやと思ったのに…何で俺なんだよ…」
「残念だったな優希。あ、そうそう。優希ここだけの話なんだけどよ…」

急にトーンを変え、悠太が真剣に言い出した。

「何だよ悠太。急に話変えて…」
「この学校の校則は…」
「恋愛禁止だろ?何回も言わすなよ、俺はアホじゃ無いんだから。」
「それは分かってるさ。そうじゃなくて、俺が言いたいのは、この学校に裏校則があるみたいなんだよ。」
「え…裏校則?何だそれ?」
「いや、俺も詳しくは知らないんだけどよ…この学校に裏校則があるって噂を聞いてな。」
「噂だろ?噂だったら、ほんとはないんじゃないのか?」
「いや、俺はあると思うな。裏校則。」
「ふぅ〜ん…そうか。裏校則ねぇ…」
「というわけで、居残り頑張れよ!」
「はぁ…思い出さすなよ…」

悠太の言う裏校則も少し気になるが、今の優希には関係無かった。寧ろ、居残りの方が気になり憂鬱だった。

(居残りって何すんだよ?全くわからん…)

その後の授業も全く身に入らない。優希はずーっと悩み、外をぼーっと眺めていた。

「おい…おい、優希!」
「はっ…はい、すいません…」
「どうした?さっきから外ばっか見てるが、何かあるのか?」
「いや…何も無いです…」
「授業に集中しろ!良いか?」
「すいません…」

今日はずっとそういうのが続き、その度に先生に叱られた。一日優希らしくなかった。ようやく授業も終わり、担任の指原先生が来た。

「皆んな、今日も一日お疲れ様。明日も元気に来てね。それから…優希君は居残りね。」
「………」
「優希君、聞いてる?」
「へっ…は…はい。すいません…」

指原先生の話まで頭に入ってこなかった。

「優希ガンバ!」
「優希が居残り…笑える。」
「じゃあな居残り野郎、精々頑張れよ!」

クラスの男子に冷やかしや弄られ、終いには…

「じゃあな優希。」
「悠太…一緒に残らねえか?」
「アホな事を…一人だろ?ま、頑張れよ!退学だったりして…あはは。」

悠太は笑いながら教室を出て行った。

(はぁ…居残りとかいつ以来だ?いや…無いよな一回も…マジだりぃ…居残って何すんだよ?)
「優希君、先に視聴覚室行ってて。」
「し…視聴覚室?な…何で視聴覚…」
「いいから行ってて。私も後で行くから。逃げちゃダメよ?」
「は…はあ…」
(何で視聴覚なんだ?とにかく行くか…)

優希は渋々視聴覚室に向かった。

夜明け前 ( 2019/03/10(日) 17:44 )