第1話「AKBでも33分もたせる!?」
04
大塚殺しの捜査を始めた六郎たちは、まず第一発見者に聞き込むことにした。


「こちら、遺体の第一発見者の兒玉遥、16歳。

“HKT48”というアイドルグループで活動しています」

「は、はじめまして・・・」


全く所縁(ゆかり)の無い状況に、兒玉は少々、動揺している様子だった。

死体を見つけてしまい、警察に事情聴取されるのだから、無理もない。

六郎は彼女の気持ちを察し、あまり長い時間を取らないことを考えていたが

隣に立つリカコが、自分の肩をバンバン叩いてくるのでそれどころでは無かった。


「な、なんやねん?何がしたいねん、お前」

「めっちゃ可愛い、はるっぴ」

「ちょ、お前黙っとけ」


リカコの手を払いのけ、六郎は一歩前に歩み出て兒玉に尋ねた。


「遺体を見つけた時、どのような状況だったか覚えてますか?」

「あっ、ううぅ・・・。えっと・・・」


動揺が抑えきれず、目がパチパチと何回も瞬きを繰り返す。

若干、涙目になっているのを見て、六郎はなぜか罪悪感に襲われた。

後ろを振り返ると、他の3人が「あ〜あ、お前泣かしたな」的な顔をしていた。


「ぼ、僕のせいやないですよ」

「知らんがな」


兒玉の方を再び向くと、彼女の肩を擦り、慰める女性の姿があった。


「大丈夫、はるっぴ?」

「う、うん・・・。ありがとう」

「あ、あの、おたくは?」

「あっ、ごめんなさい!私、“HKT48”の指原莉乃って言います。

 突然出てきてスミマセン」

「とんでもないです、ところでアナタも遺体を発見されたんですか?」

「いえ、私は見てません」

「見てないのかよ・・・」


まさかの発言に、リカコは小さな声でツッコんだ。


「あ、でも・・・」

「何かありましたか?」

「あ、いや、大したことじゃないと思うんですけど・・・。

 握手会が終わるほんのちょっと前に、大塚さんが誰かと歩いているのを見ました」

「大したことじゃないですか、それ!」


かなりの有力情報に、大田原は思わず声を荒げた。


「どんな人と歩いてましたか?」

「えっと、身長は大塚さんより小さかった気がします。女の人でした」

「“なるほろ”・・・」

「探偵、その女が犯人の可能性があるな」

「ええ、少し調べる必要がありますね」


その言葉を聞いた茂木(もてぎ)刑事は目を輝かせ始めた。


「それじゃ、俺、走って聞き込んできます!」

「いや、走らなくていい」

「どりゃぁ〜!!!!」


大田原が注意を促した時には、すでに茂木(もてぎ)は全力で走っていた。


「アイツ走るの好きだな・・・」

「それじゃ、警部は目撃情報の聞き込みを。

 リカコ君はメンバーに聞き込みをお願いします!」

「分かった!」


2人が走り去ってから、リカコは指原たちに軽く会釈をすると

「まあ、こんなことしてても、たま〜に真犯人が見つかる時があるんで

 ご心配しないでください」とやさしく微笑んだ。

ポワロ ( 2013/11/03(日) 13:52 )