超短編集
岩本蓮加@
「あんなクソガキだった蓮加ももうすぐ合法かぁ〜」
「クソガキとか言うなし」

2月1日 23:55
四つん這いで彼氏に突かれる蓮加。
彼氏が誰よりも早く祝いたいと言って高級ホテルを取ってくれたので2人で夜を過ごしている。
彼氏はシャンパンを持ってきたが、酒を飲める年齢ではないので蓮加は断った。
結局彼氏は1人で一本開けてベロベロに酔っ払った。
23時を過ぎたあたりから彼氏が非合法・合法跨ぎSEXをしたいとか調子に乗ったことを言い出した。
特に断る理由もなかったために2人は体を重ねて今に至る。

蓮加のまだ若くてハリのある身体には汗が滲み、間接照明を反射させて艶かしく光っていた。
彼氏が突くたびに波打つ肉、漏れる息。
本来酒が飲める年齢の男が手を出してはいけない若さ。
この非合法感が男の興奮を高めていた。

23:58
彼氏は蓮加を仰向けに直して正常位で再挿入する。
ラストスパートをかける彼氏。
重力で潰れた胸が揺れ、蓮加の顔も歪み始める。
歪んだ顔にキスをしながら腰を振り続ける。

「蓮加、イクよっっっ」

23:59
誕生日を迎える30秒ほど前に彼氏は果ててしまった。
2人が息を整えている間にアラームが鳴る。

2月2日 0:00
この日、蓮加と彼氏の交際は合法化された。
息の整った蓮加はケラケラと笑いながら

「跨ぐ前に終わっちゃったじゃん笑」
「終わっちゃったって言うか終わらせた感じかな」
「え?なに?どういうこと?」
「18歳の身体に興味ないんだよね」
「は?」

少しイラッとした顔をする蓮加。
それもそうだろう。誕生日を祝う言葉もなしにいきなり貶されているのだから。

「いや、合法化されちゃったら興奮しないって言うか」
「なに?なにが言いたいの?」
「別れようってこと」
「いやいやいや笑 冗談言うタイミング間違ってるよ」

蓮加も流石に呆れた顔になる。
ドッキリか何かと感じてしまうくらいのいきなりの展開に頭が拒否反応を示しているのだ。

「ガチだから。俺帰るね。」

裸の蓮加を置いて帰り支度をする彼氏。いや、今は元彼と言うべき存在。
蓮加はここでプレゼントを持ってきてくれるドッキリだと察した。

「あっそ、良いよ良いよ笑 じゃーねー」

勝手に安心してスマホを弄り出す蓮加。
彼氏が部屋を出てドアが閉まる音がしても全く動じることはなかった。
しかし、その後待てども待てども帰ってこない彼氏。
もちろんLINEも電話も何回も試したが全く音沙汰なしだった。

動こうにもここまで車で送ってくれた彼氏は帰ったし、終電はないし、タクシーを使う金もない。
結局朝が来るまで身動きも取れなくなった。
高級なホテルも1人で過ごすには無駄なスペースがあるだけで、
広大なスペースが蓮加の虚しさをより際立たせた。

朝になり、彼氏の家へと向かう蓮加。
彼氏の住むマンションに着いた蓮加は常識的にはダメだと思いつつも部屋のドアを開けた。
運よく鍵がかかっていなかった部屋のドアが開くと、そのまま静かに部屋に入っていく。
寝室に向かうにつれてパンッパンッという音と女性、いや女の子の声が聞こえる。
寝室の前に立ち、扉一枚を隔てるだけとなるとそれはより鮮明なものとなった。

なんとなくAVではない気がしていたが、蓮加は勇気を持ってその扉を少しだけ開けた。

そこには、足をピンッと上に伸ばして正常位で突かれる女性の下半身と
それに裸で覆いかぶさり重い連撃をぶつける彼氏の背中。
別の女にいわゆる種付プレスをする彼氏の姿に流石に
「嘘でしょ…」と声を漏らす蓮加。

そんな蓮加に気付くことなくまぐわい続ける2人。
誰かも知らぬ女はひたすらに「うぐっ、ふぐぅっ」と潰れた喘ぎ声を出し続ける。

ただ口を押さえて立ち尽くす蓮加。

「なんか寒くな、、あ、」

廊下から入る隙間風を感じた彼氏がドアを見ると、蓮加と目が合う

「何してんだよ、、、」
「こっちのセリフなんだけど、、、」

一瞬にして凍りつく空気。
女の方が顔を覗かせると、蓮加と目が合う。

「あやめ、、ちゃん?」

そこでくぐもった声を上げていたのは後輩のあやめだった。

「え、蓮加さんそこで何してるんですか?」
「まじでなんで入ってきてんだよ」
「私を置いていくから、、、」
「置いていくってか別れたんだから当然だろ」
「あれってドッキリじゃないの?」

少しずつ現実を理解していく蓮加の目は赤くなり始めた。

「ドッキリじゃねえよ」
「〇〇さん、蓮加さんとは別れたんだよね?」
「そうだよ、だから安心して」

不安な顔をするあやめにキスをする彼氏。
ああ、こいつは本当に非合法に興奮しているんだと確信するには充分な光景だった。

「あやめちゃん、あやめちゃんも半年もすれば捨てられるよ?」

蓮加よりも数ヶ月遅く生まれただけのあやめも同じ目に遭う。
それを確信している蓮加に言える忠告はそれだけだった。

「蓮加さん、、、そんなひどいこと言うなんて、、、」

この男の本性を知らないあやめは流石に怯え始める。

「おい、何言ってんだよクソガki、、」
「あー、いや、もうクソガキじゃないか。
「出てけよ『クソババア』」

冷めた目で言い放たれたその一言。
あんなに嫌だったクソガキ呼び、それすら愛おしかった。
そんなことに今更気付くと共に心が折れる音が聞こえた蓮加。
自分は彼にとっては「捨てた女」に成り下がったのだと完全に腑に落ちてしまったのだ。

完全に気の抜けた蓮加は一筋の涙を落とすと部屋の扉を閉じた。
重い足取りで廊下を歩く蓮加。
玄関で靴紐を結んでいる時、蓮加の耳には再び潰れた喘ぎ声と肉のぶつかり合う音が届いた。

18歳になった蓮加は自分の若さを呪った。
今まではその若すぎる年齢を呪っていたが、今はその取り過ぎた年齢を呪っている。
その日は蓮加にとって忘れられぬ誕生日となった。

フク ( 2023/03/11(土) 01:50 )