第6章
第129話

それぞれが遊ぶ中、蒼は1人木陰に座り休んでいた。

蒼「ふぅ〜、なんか1発目から散々だったな・・・。」
「ほんまにな。」
蒼「ん?・・・あ。」

声が聞こえた方を振り返るとそこには七瀬が立っていた。

蒼「七瀬。みんなと遊ばないの?」
七瀬「さっき食べ過ぎたから、ちょっと休憩しようと思って。蒼こそ遊ばんの?」
蒼「俺も食べ過ぎた、というか食べさせられ過ぎたから、休んでる。」
七瀬「後輩にモテモテやったもんな。ななたち放っておいてさー。」
蒼「それはごめん。でも、見てたなら助けてくれても良かったのに。」
七瀬「んー、まぁ困ってる蒼見るのもなんか面白かったから。」
蒼「ひどいな。」
七瀬「ふふっ、冗談。でも、ななより飛鳥の方がもっと拗ねてたで?」
蒼「あー、飛鳥はすぐ拗ねるから。その分機嫌治るのも早いけど。」
七瀬「たしかに。」
蒼「この先飛鳥と付き合う人は苦労するだろうなって、いつも思ってる。慣れたらどうってことないんだろうけどさ。」
七瀬「いや・・・飛鳥は蒼にしか無理やと思うで?」
蒼「なんで?」
七瀬「なんでって、うーん・・・なんとなく?」
蒼「なんとなくって・・・七瀬も意外と適当なとこあるな。」
七瀬「バレた?」

そう言って舌を出しおどけてみせる七瀬。

その後蒼と七瀬はしばらく2人で話した後、七瀬が白石たちの方へ呼ばれた為再び1人になった蒼。

木陰に横になり目を瞑ると、涼しい風が吹き抜ける。

蒼「なんか、眠くなってきたな・・・。」

そう言ってウトウトしている蒼のもとにひとつの足音が忍び寄る。

気配に気付いた蒼が目を開けその方向を見る
と、そこには山下がいた。

山下「あれ、起きてたんですか?せっかく驚かそうと思ったのに。残念。」
蒼「せっかくウトウトしてたところに来られた俺の気持ちを20字以内で述べよ。」
山下「うーん・・・実は美月にきてもらえて嬉しい、とか?」
蒼「残念。正解は、せっかくの眠りを妨げやがって。でした。」
山下「そのまんまですね。隣良いですか?」
蒼「どうぞお好きに。」

目を瞑ったまま横になっている蒼の隣に座る山下。

山下「よいしょっ、っと。てか蒼先輩、遊ばなくて良いんですか?みんな遊んでるのに。」
蒼「そう言う美月もなんで遊んでないんだよ。」
山下「私は遊んでたら先輩が一人で寝てたから抜けてきました。チャンスだと思って。」
蒼「なんの。」
山下「うーん、蒼先輩と仲良くなれる?」
蒼「これ以上仲良くなってどうする。」
山下「うーん・・・どうしましょう?あれ、てことは蒼先輩私と仲良いと思ってるんだー。なんか嬉しいです。」
蒼「いや、思ってないけど言ってみた。」
山下「ひどーい。まあいいや、いずれ先輩に好きになって貰うので。」
蒼「冗談だよ。てか美月ってさ、そう言うの平気で言うよね。」
山下「これくらい直球で行かないと蒼先輩は落とせそうにないので。私なりに考えた結果です。」
蒼「そう・・・まぁ、頑張って。」
山下「はい、そのつもりです。ところで先輩。」
蒼「なに?」

蒼が目を開けると山下は自分の太腿をポンポンと叩いて何かを合図している。

蒼「・・・なにしてんの。」
山下「可愛い女子高生の脚が空いてますよーってアピールです。」
蒼「だからなに。」
山下「膝枕、してあげますよ?」
蒼「アホか。みんないるのにやるわけないだろ。」
山下「みんないなかったらするんだ?先輩も意外とかわいいですね。」
蒼「先輩をからかうのはやめろ。」
山下「からかってないですよー。それにほら、みんな意外と遊びに夢中で気付いてないですから。だからほら、どうです?」
蒼「しないよ。」
山下「本当に?良い枕になると思いますけど。」
蒼「しません。」
山下「ちぇー、せっかく先輩見つけて抜けて来たのになー、あーあ。」
蒼「・・・はぁ。」

溜息を1つついた蒼。身体を動かし山下の脚の上に自らの頭を乗せる。

蒼「はい、これでいい?」
山下「ふふっ、結局来てくれるんですね。どうです、良い枕になってますか?」
蒼「・・・意外と悪くない。」
山下「良かったです。・・・じゃあ、そのまま寝ても良いですよ?」
蒼「今絶対何か企んだだろ。」
山下「あれ、バレました?」
蒼「間でバレバレだわ。何しようとしてたのかは知らないけど。」
山下「それはまぁ・・・こうしようとしてました。」

そう言って目を瞑っている蒼に顔を近づけ唇にキスをする山下。

数秒間の静寂。
唇が離れた後、蒼は目を開け山下を見る。

蒼「みんなに見られたらどうすんの。」
山下「私は構いませんよ?先輩のこと好きなの隠すつもりないですから。」
蒼「俺がいろいろ言われるんだけど?
・・・まぁ、膝枕してもらってる時点で一緒だけどな。」
山下「ですね。じゃあ、もう一回してもいいですか?」
蒼「ダメ。」
山下「ちぇ、先輩のケチ。」

そんなやりとりをしていた2人のところへボールが転がってくる。

「もう瑠奈ー、どこ飛ばしてんのー!えーと、ボールボール・・・」

ボールを探す声が聞こえる。
このままではまずいと思い慌てて体を起こす蒼。

「あ、あった〜!もう、こんなとこまで飛ばして・・・って、蒼先輩?」

蒼は声のする方を見る。
そこには、ボールを手に持ち不思議そうな表情で蒼を見つめる掛橋の姿があった。








Haru ( 2021/11/28(日) 17:38 )