第5章
第90話

7月も中旬を迎え、例年通りの梅雨もはや終わりを迎えようとしている。が、今日は生憎の大雨で、外を見れば降りしきる雨が至る所に大きな水溜りをつくっている。

飛鳥「はぁ・・・。はぁ〜〜、もうやだ。」

昼休みだと言うのに、1人机に突っ伏してため息をつく飛鳥。

蒼「どうしたの飛鳥、そんなため息ついて。」
白石「最近ずっと雨だったからじゃないかな?ほら、湿気で髪とかめんどくさくなるし。」
飛鳥「それもあるけど〜、補習が〜・・・くそ〜。」

2週間前の期末テスト。
数学のテストで飛鳥はうっかり自分の名前を書き忘れたらしく、ひどく落ち込んでいた。幸い0点になることは免れたが、罰として1週間の補習が言い渡されたのだ。

蒼「あぁ、そのことか。おつかれ。」
飛鳥「ムカつく!ちょっとは慰めろ!」
蒼「いやだって、名前書き忘れただけでしょ?点数良かったんだから別に良くない?」
飛鳥「補習があるのに変わりはないじゃん。」
蒼「言っても1週間でしょ。すぐ終わるって。」
飛鳥「そうだけど〜・・・。」
七瀬「分かってないな〜蒼は。飛鳥は補習が嫌なんじゃなくて、蒼と帰れんのが嫌やねん。」
飛鳥「なぁちゃん!そんなこと言ってないよ!」
松村「この焦り方は図星やな。」
飛鳥「あ〜もう、うるさいうるさい!みんなのバカ、バーカバーカ!」

拗ねる飛鳥。

白石「あーあ、拗ねちゃった。蒼君責任とってどうにかしてよ!」
蒼「結局俺かよ・・・。」
翔「そういや蓮は今回も補習?」
蓮「ふふん、聞いて驚け、実はなんと・・・全教科60点超えてましたー!ふぅ〜〜!」
「「ええーーー!!?」」

一斉に驚く蒼たち。
白石「ついに、蓮君が補習を回避した・・・。」
松村「奇跡や・・・。」
蒼「だな・・・。」
蓮「俺もちゃんとやればこのくらい余裕なのさ!」
飛鳥「・・・裏切り者め。」

蓮を睨む飛鳥。

蓮「で、でもさほら、齋藤さんも、補習終わったら夏休みだし!あ〜、学生最後の夏休み、何しよっかな〜。」
翔「いや、俺ら受験生だし毎日補講でしょ。」
蓮「そうだけどさ、たまには休みも必要じゃん?だからみんなで遊びに行こうぜ!」
蒼「例えば?」
蓮「例えばそうだな〜・・・海、とか。あとなんといっても祭りだな!」
白石「私も海行きたーい!」
松村「まちゅもー!」
飛鳥「私は・・・海はいいや。」
蒼「あー、飛鳥カナヅチだもんな。」
飛鳥「うるさい。」
白石「なぁちゃんは?どこ行きたいとかある?」
七瀬「ななは・・・みんなでお祭り、かな。あと、どっか泊まりに行きたい。」
蒼「泊まりか〜、どこだろう・・・。長野とか行って、コテージで泊まる、とか?」
七瀬「っ!!それ、めっちゃ良い!」

突然椅子から立ち上がり、食い気味に反応する七瀬。

蒼「お、おお。じゃあ、そうする?」
白石「そうしよ!いくちゃんたちも来るよね?」
生田「行きたーい!ゴールデンウィーク行けなかったもん、ね、真夏〜!」
秋元「うんうん、今度こそは絶対行くから!」
白石「そうだ!せっかくなら蓮加たちも誘おうよ!桃子とかさ!」
飛鳥「じゃあ、えんぴーたちも誘う。」
松村「ええなええな!めっちゃ楽しそう!」
蒼「問題はどうやって行くかだけど・・・。」
白石「人数多いもんね。うーん・・・。」
生田「あ、そういえば、うちのおじいちゃん昔バスの運転手やってたから、バス出せないか聞いてみようか?」
蒼「マジ?」
生田「マジだよ!今は辞めちゃったけど、結構長いことやってたし、知り合いもいると思うから、聞いてみるね!」
蒼「お願いします。」
生田「了解!」
蓮「よっしゃー!楽しくなってきたぜー!」
白石「飛鳥も、これで補習頑張れるね!」
飛鳥「うん!」

こうして飛鳥の機嫌も無事元に戻り、一安心する蒼たち。

放課後になり多くの生徒が下校してゆく。
今日から飛鳥が補習の為、蒼は1人で帰らなければならない。

朝から雨だったこともあり今日は歩いてきた蒼。傘をさし校舎を出ようとした時、玄関に1人の女の子がいるのを見つける。

蒼「あれ、さくらちゃん?」
さくら「あ、蒼先輩。お疲れ様です。」
蒼「お疲れ。帰らないの?」
さくら「実は今日車で送ってもらったんですけど、傘忘れちゃって。かっきーに入れてもらおうと思ったんですが、今日委員会で一緒に帰れないみたいで・・・。」
蒼「なるほど・・・。じゃあ、一緒に帰る?」
さくら「え?」
蒼「このまま放っておくと、さくらちゃん雨止むまで待ち続けるでしょ?だから、一緒で良ければ送って行くけど、どう?」
さくら「良いんですか?」
蒼「もちろん。じゃ、帰ろっか。」
さくら「はい!」

こうして蒼はさくらと帰ることになった。


Haru ( 2021/10/26(火) 12:59 )