第4章
第84話

1週間後。
無事テスト週間を終え迎えた土曜日の朝、蒼はある約束のため最寄駅に向かっていた。
そう、今日は山下とのデートの日だ。

駅に到着し辺りを見回す。すると改札の前で手を振る山下を発見する。

蒼「ごめん、遅くなった。」
山下「いえ、時間通りですよ。私が早く着きすぎただけなので。おはようございます、先輩。」
蒼「おはよ。」
山下「じゃあ、行きましょうか!」

電車に乗り目的地に向かう。
到着したのは以前飛鳥と一緒に来たショッピングモールだった。

蒼「で、山下、今日は何すんの?」
山下「あー、ダメですよ先輩、今日はデートなんですから。ちゃんと名前で呼んでくださいね?」
蒼「分かった分かった。で、どこ行くの美月。」
山下「ふふっ、それはもちろん、映画です!」

このショッピングモールには映画館もあり、休日はカップルや家族がよく見かけられる。

蒼「映画かー、確かに最近観てないかも。」
山下「私もです。先輩何観たいですか?」
蒼「いや、今日は美月のお願いで来てるんだから、美月が観たいの選びなよ。」
山下「良いんですか?じゃあこれにしましょう!」

山下が指差したのは大人の恋愛映画?のようなものだった。

蒼「恋愛映画って・・・いかにもって感じだな。」
山下「予告で見て気になってたんですよね〜。だから、ね?良いでしょ先輩。」
蒼「良いよ。じゃあチケット買ってくる。」
山下「じゃあ私飲み物買ってきます。先輩何が良いですか?」
蒼「じゃあどれか炭酸で。」
山下「はーい。」

蒼はチケットを買い、山下は飲み物を買う。
無事揃ったところで係員にチケットを渡し中に入る。

蒼「えーと席は・・・あった。」

席を見つけ座る2人。しかし、蒼があることに気づく。

蒼「美月、やっぱこっち座って。」
山下「え、何でですか?」
蒼「良いから。」

山下と席を交代する蒼。
山下は疑問に思ったものの、蒼の前に座る背の高い男性を見てすぐに理解した。

山下「先輩、ありがとうございます。」
蒼「いいえ。」

映画が始まる。
暫くすると山下が寒そうに肩をさすっている。
蒼は念の為にと持ってきていた上着を山下にそっと渡し、何もなかったかのようにスクリーンを見る。
山下は蒼に軽く会釈して上着を肩にかけた。


映画は思っていたより大人な描写が多く描かれており、学生にしては刺激的な官能シーンが多々あった。
蒼がたまに山下を見ると、山下は恍惚とした表情で映像を眺めている。

ラストは感動的なシーンだった。
山下はそっと蒼の手の上に自分の手を重ねる。
蒼は一瞬驚いたものの、気にせず映画を見続ける。

数分後、無事映画を見終えた2人は映画館を出る。

蒼「なんか・・・凄かったな。」
山下「はい・・・凄い刺激的でしたね。」
蒼「美月はああいうのが好きなんだな。」
山下「ち、違います!あそこまでとは思わなくて!」
蒼「その割にはずっと見入ってたけど?」
山下「う、うるさいです!ほら、さっさと出ますよ!」

蒼の手を引く山下。
無言のままショッピングモールを出る。

蒼「あれ、もういいの?買い物とかは?」
山下「ここには映画観に来ただけですから。」
蒼「あ、そうなの?じゃあ次どうしようか。この辺だと・・・。」

必死に案を模索する蒼。

山下「あの。」
蒼「ん?」
山下「ちょっと来て欲しいところあるんですけど、良いですか?」
蒼「いいけど、どこ?」
山下「それはまだ秘密です。」

山下に案内され電車に乗る。が、どうやら最寄駅に戻っているらしい。

予想通り最寄駅で降りた2人。山下は蒼の手を引き歩いていく。

そして、一件の家の前に到着した2人。

山下「着きました。」
蒼「いや、着いたって、どうみても家だよね?誰の家?」

山下はこう答える。

山下「もちろん、私の家です。」


Haru ( 2021/10/23(土) 09:15 )