第4章
第74話

その日の放課後もいつも通り飛鳥と帰る蒼。

蒼「あの〜、飛鳥さん、いい加減機嫌なおしてもらえませんか?」
飛鳥「後輩を誑かすような男は知らない。」
蒼「悪かったってば。てか誑かしてはないから、ほんとに。」
飛鳥「嘘。えんぴーが昨日嬉しそうにメールして来たよ、蒼先輩と夢の国行きましたって。それに、お揃いのキーホルダーも買ったらしいじゃん?」
蒼「いや、お揃いって言ってもみんなでだからね?2人とかじゃないよ?」
飛鳥「お揃いってだけで羨ましいの!そのくらい分かれ鈍感バカ!」
蒼「酷い言い草だなほんと・・・。そんな事言う子にはこれはあげらんないな。」

蒼は鞄からひとつの紙袋を取り出しひらひらと見せる。

飛鳥「・・・何それ。」
蒼「飛鳥にあげようとお菓子とは別で買ったお土産。飛鳥そういうの喜ぶかと思って。」
飛鳥「うそ、ほんと!?嬉しい!」

目に見えるような手のひら返し。

蒼「でも悪口ばっか言うからあげない。」
飛鳥「うそうそ、冗談だって。分かってるくせに〜!はい、ちょーだい!飛鳥ちゃんへのお土産!」
蒼「調子のいい奴め。はい、どうぞ。」
飛鳥「へへ、やった。なんだろ・・・って何これ、かわいい!」
蒼「蓮加とみなみと色違いのお揃いにした。色もちゃんと考えて選んだから。」
飛鳥「え〜嬉しいありがと〜。」
蒼「みんなにはないから内緒な。」
飛鳥「はーい!うーんどうしよう、鞄につけようかな。でも落とすの怖いな・・・。」
蒼「大丈夫じゃない?」
飛鳥「ほんと?じゃあ鞄につけよっと。」

早速鞄につける飛鳥。

飛鳥「これでよし・・・と。うん、かわいい。ありがとう。」
蒼「どういたしまして。あとこれは齋藤家のお菓子ね。お母さんもお父さんもこう言うの好きでしょ?」
飛鳥「うん、喜ぶと思う。さすが蒼、分かってんじゃん。」
蒼「だろ。」
飛鳥「でも、いいなぁ。私行ったことないもん。」
蒼「いや、飛鳥遊園地そんな好きじゃないじゃん。」
飛鳥「なんかあそこは普通の遊園地とは違うでしょ?なんていうか世界観?みたいな。」
蒼「まあ、そうだな。」
飛鳥「なんか小説みたいでさ、憧れるんだよね。死ぬまでに一回は経験したい。」
蒼「まだ17なんだから、行こうと思えばいけるじゃん。」
飛鳥「さすがに1人であそこは行けないよ。1人で行けるのは焼肉まで。」
蒼「焼肉1人で行けるのが凄いわ。」
飛鳥「もうこれは、みんなで行くしかないね。しーさんとかなぁちゃん誘って!」
蒼「受験が無事に終わればな。」
飛鳥「あーいやだー。勉強したくないー。」
蒼「とか言ってなんだかんだ毎日勉強してるでしょ。」
飛鳥「まぁね。でも、蒼に比べたら全然。」
蒼「まぁ俺は勉強嫌いじゃないしな。」
飛鳥「ほんと変人だよね。」
蒼「変人言うな。そういえば、飛鳥って大学行くの?」
飛鳥「一応そのつもりだけど、まだどこ行きたいとかは全然かなー。蒼は?」
蒼「俺は・・・なんとなくは決まってる。」
飛鳥「どこ?」
蒼「それは秘密。」
飛鳥「ケチ。」
蒼「ケチで結構。」
飛鳥「まあいいや。気が向いたら教えてね。」
蒼「ん。」

そんなことを話しているうちに家に着く。

飛鳥「じゃあ、今日もありがとう。また明日ね。」
蒼「ん、また明日。おやすみ。」
飛鳥「うん、おやすみ。」

飛鳥を見送り家に入る。

蓮加「あ、お兄ちゃんお帰り!お母さん帰って来てるよ!」
蒼「え、そうなの?」

靴を脱ぎリビングへ入ると、そこには数ヶ月ぶりに見る母の姿があった。

母「あら蒼、おかえりなさい。久しぶりね。また背伸びたんじゃない?」
蒼「ただいま母さん。確かにちょっと伸びたかも。」
母「成長期だものね〜。学校はどう?楽しい?」
蓮加「聞いてよお母さん、お兄ちゃんってばモテモテなんだよ!」
蒼「おい蓮加、そんなこと言わなくていいって!」
蓮加「減るもんじゃないからいいじゃん!」
母「そうよ〜、お母さんにも聞かせてよ〜。」
蒼「はぁ・・・。俺お風呂入ってくるから。」
「「いってらっしゃーい!」」

お風呂に入ったあと夕食を食べる。
久々の母さんの料理はどれも美味しかった。

蒼「ごちそうさま。美味しかったよ。」
母「嬉しいわ〜。あ、いけない。お母さんそろそろまた出なきゃ。」
蒼「もっとゆっくりしていけばいいのに。」
母「お母さんを待ってる人がたくさんいるからね。休んでばかり居られないのよ〜!」
蒼「ほんと、仕事好きだよな母さんは。まぁ、身体だけは気をつけて。」
母「ありがとう。あ、飛鳥ちゃん元気?しばらく会ってないから心配で。」
蒼「大丈夫だよ、変わらず元気にやってる。」
母「あらそう、ならよかった!またご飯食べに来てって伝えといてね。じゃあ、行ってきます!」
蒼「行ってらっしゃい。」
蓮加「行ってらっしゃーい!」
みなみ「行ってらっしゃい!」

3人で母を見送る。
その後自分の部屋に戻り勉強をした後、布団に入る蒼。
ふとスマホを見ると1件の通知が来ている。

蒼「誰だろ・・・ん、賀喜さん?」

それは、後輩の賀喜からだった。
内容は今度の期末試験に向けて週末に勉強を教えてほしいとのこと。

蒼「勉強か、教えられるかな・・・まぁとりあえず了解・・・と。」

その後、突然睡魔が襲ってきた蒼はそのまま眠りにつくのであった。


Haru ( 2021/10/18(月) 20:22 )