第4章
第69話

夢の国に到着してからはや3時間が経過した。
予報が雨だったせいか人もそれほど多くないいため、思っていたよりアトラクションの待ち時間も長くはなかった。
既に3つのアトラクションを体験した蒼たちは売店で食べ物を買い遅めの昼食をとる。

早川「ん〜、美味しい!ちょっと高かったけど!」
蒼「早川、こういうとこでは値段気にしたら負けだよ。」
早川「確かに!気にせんとこ!」
田村「みんなあと何乗りたい?」
賀喜「私あれ乗りたい!」

賀喜が1番大きなジェットコースターを指す。

田村「いいね、私も乗りたいと思ってた!」
早川「せーらも!それに、まだ先輩の隣に乗ってないから次こそ乗る!」
田村「じゃあジャンケンで勝たないとね〜。先輩は乗りたいのありますか?」
蒼「俺は・・・あれかな。」

蒼が指したのはホラーとジェットコースターが融合したアトラクションだった。

掛橋「ホラーじゃないですか!無理です!絶対無理!」
蒼「え〜、乗りたかったんだけどなあ。みんなは?」
賀喜「怖いですけど、先輩もいるならいけるかも・・・。」
さくら「私も・・・。」
田村「私も怖いけど乗りたい!」
早川「せーらも!」
蒼「どうする?掛橋。」
掛橋「えー・・・じゃあ、これ乗る時は絶対先輩が横に乗ってください!それなら頑張ります。」
蒼「わかった。みんなもそれでいい?」

他の4人が頷く。
その後無事昼食を食べ終えた6人は賀喜が乗りたがっていたアトラクションに向かうことにした。

アトラクションのある場所に近づくにつれ大きくなる悲鳴。

賀喜「お、思ってたよりおっきいね・・・。」
田村「あれ、かっきービビってるの?」
賀喜「び、ビビってないし!ただちょっとおっきいなって思っただけ!」
蒼「そういう田村も汗凄いけど。」
田村「いやぁ、いつも通りですけど〜?先輩冗談きついですよ〜、あはは。」

蒼以外の5人は予想を超える大きさに内心ビビっていた。
列に並び順番を待つ。

さくら「や、やっぱり私怖いな・・・。」
早川「あー、もう列に並んでるから抜けるの禁止やでー!」
さくら「え〜、どうしよう・・・。」
蒼「案外平気かもよ?ほら、声出すと怖さ軽減するって言うし。」
さくら「本当ですか?大丈夫かな・・・。」
蒼「そんな怖いなら隣乗ろうか?」
さくら「いいんですか?せーらとか乗りたがってましたけど・・・」
蒼「早川は平気そうだからね。こっそり乗っちゃえば大丈夫だよ。」
さくら「じゃあ・・・お願いします。」

そう話しているうちに順番が回ってきた。
さくらを先に乗せ、その隣に蒼が座る。

早川「あー、さくちゃんずるーい!」
田村「まあまあ、せーらは私の横ね!ほら行って!」
早川「むぅ〜!まあいいや!乗ったら変わらへん!」
蒼「ほらね?」
さくら「ふふっ、本当ですね。」

定員約30人が乗り込み、コースターが動き始める。

段々と標高が高くなり、次第に景色がひらけてくる。
蒼「さくらちゃん、景色すごいよ。見ないの?」
さくら「無理です〜、先輩ちゃんと隣居ますか?」
蒼「いるよ、ほら。」

そう言って蒼はさくらの右手を握る。

さくら「っ!!」

驚いて目を開けたさくらと視線が合う。

蒼「ちゃんと居るでしょ?」
さくら「はい・・・。でも・・・」
蒼「?」
さくら「違う意味でドキドキします・・・。」
蒼「違う意味?」
さくら「あ、えーと、つまり、私先輩のこと・・・っ!?キャーーーーーっ!!」

さくらが何かを言おうとした瞬間、ジェットコースターは急降下する。

蒼「今なんて言ったのー!」
さくら「キャーーーーーっ!!」

全く聞こえてないと蒼は悟った。
その後も叫び続けたさくら。ジェットコースターが停まる頃には髪は乱れ、声は枯れていた。

蒼「大丈夫?」
さくら「なんとか・・・。先輩が手握ってくれてなかったら、ダメでした・・・。」
蒼「ダメにならなくて良かったよ。さ、降りよっか。はい、手貸して。」
さくら「ありがとう、ございます。」

コースターを降り、アトラクションを出る。
蒼と早川以外のみんなは叫びすぎて疲れたのか、乗る前より元気がなくなっている。

蒼「みんな大丈夫?髪ボサボサだし、声出てないよ?」
賀喜「逆に・・・何で先輩はそんなに普通なんですか・・・。」
蒼「叫んでないからね。」
早川「せーらも元気!」
蒼「掛橋は・・・。」
掛橋「・・・。」
田村「死んでますね・・・。」
掛橋「死んでないよ!でも喉乾いた・・・。」
蒼「はい、お水。」
掛橋「ありがとう、ございます。・・・ふぅ、生き返りました!」
田村「良かったね、沙耶香!」
蒼「何が?」
掛橋「・・・!ち、違うから!そう言うんじゃないし!」
蒼「だから何が。」
掛橋「先輩は知らなくていいです!ほら、次行きますよ!」
蒼「理不尽・・・。まぁいいや。ほら、みんな行くよー。」

こうして蒼たちは次の目的地であるホラーアトラクションへと足を進めるのであった。

Haru ( 2021/10/16(土) 08:45 )