第3章
第63話

残り時間が僅かなこともあって最大勢力で攻める相手チームとギリギリで凌ぐ蒼たち。
一進一退の攻防が続く。

蒼「・・・くっ!」
やまと「もう限界だろ・・・蒼!」
蒼「それでも、このボールだけは、渡さない!・・・蓮!」
やまと「させるか!」

蒼とやまとの激しい競り合い。ボールはやまとの足に当たって外に出る。

やまと「・・・チッ!」
蒼「はぁ、はぁ・・・。」

応援する白石たちのもとへ転がるボール。
七瀬がそれをキャッチし、蒼の元へ歩み寄る。

蒼「七瀬・・・。」
七瀬「はい、ボール。」
蒼「あぁ、ありがと。」
七瀬「点、取って来てな?」

七瀬からボールを受け取る。
七瀬の後ろでは白石や飛鳥、後輩たちがその光景を見つめる。

蒼「・・・あぁ。だから、ちゃんと見といて。」
七瀬「うん、分かった。」


蒼のスローインから試合を再開する。
残り時間はロスタイムを合わせても3分を切っていた。

蓮「チッ、しつけぇ・・・!」
優太「もう点はやらない、いや、やれないんだ!」
蓮「っ!しまった!」
優太「やまと!これで決めろ!」

優太から前線に走っていたやまとへのDFの裏を取る超ロングパス。

やまと「(よし来た!後はこれをトラップしてシュートを打つだk)」
蒼「最後は絶対ここだと思った。」
やまと「なっ、蒼!?いつの間に!」

蒼がやまとより先にロングパスをカットする。

蒼「これが最後のプレーだ・・・翔!」
翔「はいよ。蓮!」
やまと「やべぇっ・・・お前ら止めろ!」

パスを繋ぎDFを次々と抜いていく。
蓮「凪!」
凪「おっけー。」

ゴール前の凪にパスが渡る。

蓮「凪!決めろ!」
優太「させない!」
凪「うぇっ、優太邪魔・・・。」
優太「みんなが戻るまで足止めさせる!」
凪「・・・いや、もう終わりだよ。・・・そこにいるんでしょ・・・蒼。」
優太「・・・なっ!?」

ノールックで斜め後ろへのパスをする凪。
ボールが転がるその先には、ただ1人凪を信じて走り込む男の姿があった。

蒼「凪、やっぱお前は最高だよ。」

蓮「蒼、決めろー!」
翔「決めろ!」
凪「いけ、蒼。」

「「いけー!!」」

蒼「俺たちの・・・勝ちだ。」

蒼がダイレクトで左足を振り抜いたボールは、吸い込まれるようにゴール右上を貫いた。

「「・・・・・・ワァーー!!」」

この日一番の歓声が鳴り響く。
それと同時に審判のホイッスルが試合終了を告げた。

白石「やった!優勝だよみんな!」
生田「おめでとー!!」
松村「みんなかっこよかったでー!」
七瀬「本当に勝った・・・すごいなぁ、蒼は。」
秋元「ほんとにね!凄かった!ね、飛鳥!」
飛鳥「うん、うん・・・。ふっ、うっ・・・。」
秋元「飛鳥今度こそ本当に泣いてるじゃん!」
白石「まーなーつー!飛鳥を泣かせるなー!」
秋元「な、何もしてないってば〜!」

蓮加「やった!お兄ちゃんたち優勝だ!」
大園「すご〜い!ほんとに勝っちゃうなんて!」
与田「うん、やっぱり蒼君は凄か人や!」
梅澤「ほんとにね!」
久保「うん!」
山下「(かっこよかったよ、蒼先輩。)」
久保「ん?やま何か言った?」
山下「え?ううん、なんでもないよ!先輩、おめでとうございまーす!」

賀喜「先輩たち、凄かったね!」
さくら「うん、優勝だって!すごいよね!」
掛橋「せんぱーい!かっこよかったでーす!」
田村「私もファンになりそう。」
早川「まゆたん今更?聖来はもうファンやで!」
田村「あ、ずるい!じゃあ私も!」
掛橋「ふ、2人とも!せ、先輩は渡さないからね!」
賀喜「私たちも負けてられないね・・・。」
さくら「うん・・・。」


蓮「蒼!お前ってやつは!」
翔「ほんと、よく走ってたな。凪と話してたのか?」
蒼「いや、何も。でも凪なら何となく出してくれそうだなと思って。」
凪「俺もー。蒼ならなんとなく走ってそうだなーって。」
蓮「やっぱすげぇな、2人とも。」

やまと「負けたよ。」
蒼「やまと・・・。久々に楽しかったよ。」
やまと「お前と凪がうちのサッカー部に入ってたら、インターハイも夢じゃなかったのかもなあ。」
蒼「買い被りすぎだって。まぁでも、最後にやまとたちと試合できてよかったよ。」
やまと「あぁ、俺もだ。またいつかやろうぜ。」
蒼「そうだな、またいつか。」

力強く握手を交わす2人。その後やまとは何も言わずそのまま去っていった。

蒼「さて、終わったしみんなのところに・・・っ!」

突然蒼がしゃがみ込む。

蓮「蒼、どうした?」
蒼「・・・ダメだ、両足攣った。動ける気がしない。」
蓮「はぁ・・・締まらねえなぁ全く!」
翔「蒼らしいよ。」
蒼「締まらなくて悪かったな。」
凪「じゃあ、このまま引っ張って行こー。」
蒼「あ、ちょ、凪!?痛っ、痛いってば!バカ、おい!ちょ、蓮、翔!見てないで助けろ!」
蓮「さ、閉会式行くか。」
蒼「あ、おい!ちょ、ほんと助けて・・・。」


こうして、色々あった最後のクラスマッチは終わりを迎えたのだった。

■筆者メッセージ
前回の投稿で閲覧数が1万人を超えました!
いつも読んでくださっているみなさん、本当にありがとうございます。

引き続き頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いします!
Haru ( 2021/10/13(水) 08:21 )