第3章
第62話

相手のスローインからリスタートする。

やまと「足はもう大丈夫なのか?」
蒼「まだ少し痛むけど、みんながやれってうるさいからさ。」
やまと「大人しく休んどけって。俺たちが勝つんだから。」
蒼「そういうわけにはいかない。あと10分で逆転しなきゃだから。」
やまと「させないけどな。」

相手がボールを繋ぎ蒼たちのゴールへ迫る。

蒼「翔、フォロー頼む!」
翔「りょーかい。」

蒼がボールを奪いに向かう。
相手が焦って縦に蹴ったボールを翔がカットする。

翔「蒼!」
蒼「ナイス!さてと・・・。」

翔からボールを受けた蒼。相手と味方の位置を確認する。

蒼「(ゴールまで大体40メートルってとこか。今一番フリーなのは・・・。)」
凪「・・・。」

凪と目が合う。
その瞬間、凪が相手ゴールへ走り出す。

蓮「おい凪、どこ走って」
蒼「えーと・・・確かこう、振り抜いて・・・凪!」

蒼が左足を勢いよく振り抜く。
ボールは地面を這うように味方と相手の間を猛スピードですり抜け、凪へと向かっていく。

やまと「っ!!!優太!」
優太「分かってる!来いよ、凪!」

優太が凪を止めようと全速力で追いかける。

凪「知ってる?いくら足が速くても、人間は急に」

凪「後ろには進めない。」
優太「なっ!?」

蒼が蹴った斜め後ろからの高速パスをトップスピードで走って来た優太とは反対の方向にトラップする凪。
一瞬で優太を置き去りにした凪が放ったシュートはキーパーに動く隙を与えずゴールの右隅に突き刺さった。

「「・・・・・・。」」

数秒の静寂。
その直後、グラウンドに大歓声が響く。

蒼「凪!」
凪「蒼!」
蒼&凪「しゃぁぁぁ!!!」

突然の2人のコンビネーションに驚く相手チーム。
やまと「今ので思い出した。間違いない、中学の時のあいつらだ。」
優太「サッカー部辞めてもあれって・・・バケモンすぎだろ。」
「いやー、今のはやられたな。」
やまと「篤志。他人事じゃねえぞ。」
篤志「悪い悪い。でも、これで振り出しか。」
悠馬「5分あれば余裕でしょ。」
やまと「当たり前だろ。いくぞ。」


白石「何今の・・・凄すぎる。」
生田「蒼君がボール持ったと思ったら、次の瞬間には凪くんの足にボールがあって、あっという間に1点返した・・・。」
七瀬「すごい・・・。」
飛鳥「蒼・・・。」
秋元「あれ、飛鳥泣いてるの?」
飛鳥「べ、別に泣いてないし!目にゴミが入っただけ!」
松村「さぁ、あと5分やで!まちゅたちも全力で応援しよ!」
「「おおっ!A組ファイトー!」」


梅澤「あれが、先輩の実力・・・。」
久保「すごすぎる・・・パスを出した橘先輩も、ゴールを決めた凪先輩も。」
蓮加「お兄ちゃん・・・。」
与田「間違いなくあの頃の蒼君や〜!」
山下「あと5分・・・。頑張れ、先輩。」
大園「お兄さ〜ん、頑張って下さーい!」

さくら「蒼先輩、すごい・・・。」
賀喜「うん、ほんとに・・・。」
聖来「先輩、カッコいい・・・。」
田村「聖来が完全に恋する女の子の目になってる・・・。」
掛橋「なっ、ダメだよ!沙耶香の先輩だからね!せんぱーい、がんばってー!!」


残り時間、あと5分。


Haru ( 2021/10/12(火) 18:51 )