第3章
第55話

飛鳥「は、入った・・・。」

その瞬間ホイッスルが鳴る。
飛鳥のブザービートで試合を引き分けにできたようだ。

白石「飛鳥ーー!」
飛鳥「し、しーさん、やったよ〜、ふぇ〜ん。」

白石たちが飛鳥に駆け寄る。
飛鳥は恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに笑っていた。

蒼「ナイスゴール、飛鳥。」
蓮「良かったな決まって。練習じゃ一回も決められなかったのに。蒼が叫んだおかげかもな。」
蒼「まさか。」

飛鳥がこちらに向かって嬉しそうに手を振る。蒼たちも手を振り返す。

蒼「さてと、じゃあ約束通り山下たちの試合でも観に行こうかな。」

蒼が蓮たちと階段を降りようとしたその時。

ーバタンッー

何かが倒れたような音がする。

蓮「今の何だ?」

「おい、人が倒れたぞ!」

蒼たちは慌てて声のする方を見る。するとそこには、苦しそうに倒れる七瀬の姿があった。

その瞬間、蒼は急いで階段を駆け降りる。

白石「なぁちゃん!なぁちゃん、しっかりして!」
蒼「白石!」
白石「蒼君、なぁちゃんが!」

七瀬の元へついた蒼。七瀬を見ると少し苦しそうにしている。

蒼「七瀬、大丈夫か!?」
七瀬「蒼・・・寒い。」
呼吸を確認し、額を触る。

蒼「っ!凄い熱だ。とりあえず保健室連れて行く。」
白石「私たちもついていく!」
蒼「いや、大丈夫。それより白石たちは先生に知らせてくれ。どこか打ってる可能性もある。」
白石「わかった、行こうみんな!」

白石が飛鳥たちを連れて先生を探しに行く。
蒼は七瀬をお姫様抱っこで持ち上げる。

蒼「七瀬、恥ずかしいけどちょっと我慢して。」
七瀬「うん・・・ごめん・・・。」
蒼「謝らなくていいから。蓮、ちょっと抜ける。次の試合もしかしたら」
蓮「大丈夫、任せろ!なに、決勝トーナメントは上がれるんだ、安心していってこい。」
蒼「ああ、助かる。」

そう言って蒼は七瀬を抱き抱え、保健室へ向かった。


ーガラガラッー

蒼「深川先生いますか!」
深川「あら橘君、って西野さん!?大丈夫!?」
蒼「さっき体育館で突然倒れて・・・熱が凄いんです。」
深川「分かった、とりあえずベッドに寝かせてあげて。今お水とお薬と濡れタオル持ってくるから!」
蒼「ありがとうございます。」

薬を飲ませベッドに横になる七瀬。
数分後、呼吸も落ち着きスヤスヤと寝息を立てている。

深川「どうやら落ち着いたみたい。橘君のおかげだわ。」
蒼「いえ、俺は連れてきただけなので。もっと早く気づいていれば・・・。」
深川「幸い、倒れた時に頭を打ったりはしてないみたいだから良かった。今日西野さん何か変わったこととかなかったの?」
蒼「普通にバスケの試合にも出てましたし、特に何も・・・いや、そう言われてみればいつもより口数が少なかった気もしなくはないです。」
深川「そう・・・おそらく無理していたんでしょう。最後のクラスマッチですものね。」
蒼「はい・・・。」
深川「とりあえず私設楽先生と親御さんに連絡してくるから、少しの間だけ見ててもらえる?試合大丈夫?」
蒼「はい、次の試合は蓮たちに任せたので。あるとしたら昼休み後なので大丈夫です。」
深川「そう、それじゃ、少しの間よろしくね。何かあったらすぐ呼んでね。」
蒼「分かりました、ありがとうございます。」

深川先生が保健室を後にする。

蒼「七瀬・・・ごめんな。」

そう言って蒼はしばらくの間七瀬の寝顔を見つめていた。

Haru ( 2021/10/09(土) 09:24 )