第2章
第35話


男が去るのを確認し、ハッと我に返る。
後ろを振り返ると、女子生徒は安心したのか地面にへたり込んでいた。

蒼「大丈夫?怖かったでしょ。立てる?」
?「怖かった・・・。まだ足に力入らない、です。」
蒼「ちょっと待ってて。」
蒼は彼女を落ち着かせるため飲み物を取って来てそれを渡す。

蒼「はい、これ。お茶だけど。」
?「あ、ありがとうございます。蒼先輩。」
蒼「あれ?何で俺の名前・・・。」
?「知ってますよ、蓮加のお兄さんですよね?私、山下美月って言います。」
蒼「山下、山下・・・もしかして蓮加と同じクラス?」
山下「はいそうです。」
蒼「君か〜山下さんって。いやぁ、蓮加が学校であったこと話してくれるんだけど、よく山下が面白いって言っててさ、会ってみたいなって思ってたんだよね。」
山下「え、なんか恥ずかしい!変なこと言ってませんでしたか?」
蒼「ん〜・・・あ、この前授業中居眠りしてる時白目向いてたって言ってた。」
山下「や、やだ恥ずかしい〜!いつもじゃないですから、たまたま、たまたまですよ!」
蒼「分かってるって。」

山下はよほど恥ずかしかったのか手で顔を仰いでいる。

蒼「どう、少しは落ち着いた?」
山下「はい、ありがとうございます。また助けられちゃったな・・・。」
蒼「また?前にも助けたことあったっけ?」
山下「覚えてないんですか?」
蒼「お恥ずかしながら・・・。」
山下「去年のクラスマッチ、先輩ソフトボール出てましたよね?その時、近くで応援してた生徒のとこにボールが飛んできて、それを蒼先輩が間一髪のところで助けたの、覚えてませんか?あれ、私なんです。」
蒼「・・・あ、思い出した。そっか、山下さんだったんだね。」
山下「その時も今みたいに大丈夫?って優しく声かけてくださって・・・。本当ありがとうございました。」
蒼「どういたしまして。」

会話が止まり静まる廊下。
部屋から漏れる歌声が響く。

山下「・・・・・・あの。」
蒼「どうしたの?」
山下「1つ、お願いしてもいいですか?」
蒼「内容にもよるけど、聞いてあげる。」
山下「あの、これから私のこと、美月って・・・呼んでくれませんか?」
蒼「え、山下さんを?ん〜、そうだなぁ。」
山下「ダメ・・・ですか?」
蒼「いやダメってわけじゃないけど、急に名前で呼ぶとか馴れ馴れしいじゃん。」
山下「私がいいって言ってるんだから良いんです!ねぇ、蒼さん、美月って呼んで?」

上目遣いで蒼を見る山下。

蒼「・・・美月。」
山下「ふふっ、なんか照れますね?」
蒼「いや、まったく。」
山下「もう、そこは照れるでいいじゃないですか〜。でも嬉しいです、私男の子に名前で呼ばれるの初めてで。」
蒼「そうなの?」
山下「はい。初めてが蒼先輩でよかったです。・・・あ、やっぱり後もう1つ。」
蒼「さっき1つって言ったのn」

蒼が言い切る前に山下の唇が触れる。
数秒後、唇が離れ見つめ合う2人。

山下「ごめんなさい、こっちの初めても、先輩にあげますね。」
蒼「・・・。」
山下「あれ、今度は本当に照れてます?蒼先輩のかわいいとこ発見しちゃいました。」
蒼「誰だって照れるでしょ。てか好きでもない男にキスとか絶対しちゃダメだから。」
山下「・・・好きならいいんですか?」
蒼「え?・・・まぁ、相手もその気ならいいんじゃない?でも、そういうのは大切にしなよ、美月も女の子なんだから。」
山下「キスしたことは怒らないんですね。」
蒼「軽々しくしてたら怒るかな。でもまぁ、好きならいいとか聞かれたら流石の俺でも分かるよ。」
山下「はい、好きです、蒼先輩のこと。」
蒼「ありがとう、美月。」
山下「これからもいっぱい先輩に会いにいきますね?絶対おとしてみせます。」
蒼「いつでもおいで。でも、いきなりキスとかはダメだからね?」
山下「ちぇ〜。」
蒼「やろうとしてたんかい。」

その後もう少し話してから無事お互いの部屋に戻った2人。
あまりの遅さに蒼が全員から非難を浴びたことは言うまでもない。



■筆者メッセージ
すみません!
本日分の投稿を忘れていました。

楽しみにしてくださっていた方、遅くなって申し訳ないですが、読んでいただきありがとうございました!

明日も是非読んでくださいまし。
Haru ( 2021/09/27(月) 22:54 )