第34話
「あー、美味しかったぁ!ご馳走さまー!」
「直樹ありがとう!」
焼肉を食べ終えました。
といってもどんなに肉を焼いても焼いても2人に次々と取られてしまい、結局僕は食べ放題のラスト30分で急いで肉を胃に詰める羽目になってしまったのだが。
「いえいえ…」
経済的にも精神的にも大打撃を食らった。まぁ、白石が笑顔になった。それはとりあえずよかったかなと思う。
「白石さんはここから家近いんですか?」
「うーん、通学時間はだいたい1時間くらいだよ?ここからだともう少しかかるかも。」
優菜と白石はすっかり打ち解けたようで楽しそうに喋っている。
「ねー、お兄ちゃんー」
「ん?」
「白石さんお家に呼んでもいい?」
「え、呼ぶって泊まるってこと?」
「そう!白石さん今日お泊まりしに来ませんか!?」
すっかり懐いてしまったようで僕に滅多に見せない笑顔で白石に詰め寄る優菜。
「え、でも…着替えとかもないし、ほら、その…下着とかもさ…」
少し言いにくそうに答える白石。
「そんなのコンビニで買ったらいいじゃないですか!服は私のありますし!」
呼ぶと決めたら呼びたいというのがこいつの性格で、一歩も引く様子はない。
「でも、明日は朝から部活が…。」
気まずそうにいう白石。
明日は土曜日なので通常なら朝から部活があるのは普通のことだった。
こんな仕打ちを受けてまでまだ部活に行こうと思う彼女は本当に強いんだな。そう思った。
「白石さ、大会っていつだっけ?もう近いの?」
「いや、あと3週間後だからまだ日はあるけど…。」
「じゃあ、明日は休んだらいいんじゃないかな。一回ゆっくりしてみるのもいいと思うよ…?」
言おうか迷ったがもし明日、今日のようなことがあったらと思うとそう言わずにはいられなかった。
「わかった…、、」
少し考えたあと、振り絞った声でそう呟いた。
「じゃあ決まり!白石さん行きましょ!お兄ちゃん変なことしちゃダメだぞー?」
その場を盛り上げようと明るく振舞ってくれる優菜。いつもは当たりが強いが、本当にいい妹だと思う。
「し、しねーよ!」
「えー、僕も男だよ?とか言ってたのにー?」
さっきまでの調子が嘘のようにまた僕をいじり始める白石。
「ちょっ、ちょっと…白石それは…!」
優菜の目の前でまさかそんなことを言うとは思わず焦る。
「え、なになに?教えてください!」
興味深そうに聞く優菜
「し、白石!それは絶対に言わないで!」
「ふふふ、優菜ちゃん今晩ゆっくり話そっか?」
「いぇーい!」
「ちょっと…!さすがに勘弁してよぉ…」
その声は届いておらず2人はまた楽しそうに手を繋ぎ家へと走って行った。
「はぁ。」
騒がしい夜になりそうだ。