第26話
嫌な予感がする。
1年生で入部直後からレギュラーを取った白石。先輩からの強すぎる当たり。そして、さっきのソフトボール部の部員の会話。
これらが繋がると僕の頭の中にはどうしても心配しか浮かばなかった。
もう辺りは暗くなっている。
校門へ向かう生徒たちの流れに逆らって進む。
白石の顔を探してみるがなかなか見当たらない。
ついに、僕の方向へ歩いてくる生徒は見当たらなくなった。
『もう、帰ったのか?』
そのような考えが一瞬浮かぶ。だが、僕の直感がそうではないと言っている気がした。
ソフトボール部が普段練習しているグラウンドへ行く。
当たり前だがそこには綺麗に整えられた土しかなかった。
『どこにいるんだ…』
考えを巡らす。
『部室、部室だ!』
頭の中で何かが弾けるようにそれが閃いた。部活に所属していない僕はなかなか部室というワードが頭の中に浮かばなかった。
部室にいるかもしれないと思ったもののそれがどこにあるのか、入学して1ヶ月弱の僕には分からなかった。
どこへ行けばいいか分からずその場でたじろいでいると近くから人の足音が聞こえた。
「おー、内田じゃないか。部活やってないのになんでこんなとこにいるんだ?」
担任の日村先生だ。
「あ、えーっと、あの忘れ物をして…」
「そーなのか、こんな時間に大変だなぁ。気をつけていけよ。」
「あ、はい。」
そういうと先生はその場を立ち去ろうとした。
「あ、先生!」
「ん?」
「あ、あの変な意味じゃないんですけど…まだ入学したてで分からないだけなんですけど…」
「どうした?」
「なんでもいってみなさい?法とモラルに反してなかったらなんでも答えるから」
「あ、あの。…女子の部室ってどこにありますか…?」
「あー、なるほどね!…ここをまっすぐいって右へ曲がったら女子の部室棟があるよ。」
「ありがとうございます!」
それを聞くと一目散にそちらへ走っていく。
「お、おい!教室そっちじゃないぞ!」
そういう頃には直樹はすでに遠くへ走り去っていた。
「ま、あいつなら法に触れることはしないだろ。いいか。」
そう呟き。
職員室へ戻っていく日村先生であった。