第3話
教室の前まで来た。
いざ来たはいいが、僕は新学期早々遅刻したわけでとにかく入りづらい。
教室の中からは男の先生の声が聞こえる。自己紹介をしているようだ。
しばらく教室の前で固まっていると隣にいた橋本さんが口を開いた。
「なにしてるの?入らないの?」
「いや、だってさ、入りずらくない?
みんな初対面なわけだしさ…」
「そんなこと気にせんでいいしょや。
いくよ。」
そういうと、彼女は僕を押しのけて教室の扉を開けた
ガラガラガラガラ
「遅れてすいません。」
慌てて僕も教室へ入る
「遅れてすいませんっ!!」
「おー、来たか。ちょうど自己紹介していたところだ。あ、俺はこのクラスの担任の日村勇紀だ。1年間よろしくな。」
「よろしくお願いします」
全く知らないクラスメイト40人の前でも全く物怖じせずきちんと挨拶をする橋本。
緊張で立っているのがやっとな僕は軽く頭を下げることしかできなかった。
「あ、えーとお前らの席はここだ、ここ。もう座っていいぞ。」
どうやら僕の席は一番後ろのようだ。
助かった。と思い席へ向かう。
その後、生徒一人一人の自己紹介が始まった。
もちろん僕は目立たないようごく普通の自己紹介をした。
そうしてホームルームが終わり10分の休憩時間になった。
「おい直樹、お前新学期早々やらかしてんなー!どうせまた方向音痴発揮してたんだろ?」
「うわっ、なんだよ智大かよ…びっくりしたぁ。」
彼の名前は西井智大。
幼稚園からの幼馴染でまぁ世間一般でいう親友?的な存在だ。
「なんで、そんなびっくりすんだよ!あ、お前もしかして遅刻したから俺とクラス同じってこと知らなかったやつ?」
「そうそう。このクラスに知り合いいないと思ってたからさ、いきなり肩叩かれてすごいびっくりした。」
「相変わらず、臆病だなお前。ビクビクしすぎだっつーの!」
そう言ってもう一度僕の方を叩く智大。
「うるせぇ!」
そんなしょうもないやり取りをしていると2時間目開始のチャイムが鳴った。
2時間目は課題テストだ。
県内でもそこそこ有名な進学校であるこの学校は学期に2回あるそれぞれのテストの結果でクラスの中でもさらにAクラスとBクラスに分けられ少人数での授業が行われる。
そのため、みんな気合を入れてこのテストに臨むのだ。
当然、僕もしっかりと事前に勉強をして来た成果を出そうと意気込みテストが配布されるのを待っていた。
すると、隣からゴソゴソという物音が聞こえた。不思議に思い隣を見てみると女の子が自分のカバンの中を必死に漁っていた。
どうやら筆箱を探しているみたいだ。試験開始も迫っていて相当焦っている。
「あの、筆記用具貸そうか?」
見かねて小さな声で声をかけた。
「え、いいんですか?」
「うん。いいよ。」
そういい彼女にシャーペンと消しゴムを手渡す。
「すいません。本当にありがとうございます!!」
ものすごく目を見て感謝された。
今初めて顔を合わせて気づいたが、ものすごく美人だ。
大きな瞳。高い鼻、そして白い肌。
唇の上にある可愛らしいホクロが印象的だった。
「いえいえ、気にしないで。」
朝の橋本さんもそうだが、なぜかこのクラスは美人が多い。しかも桁外れなレベルの。
そんなことを考えているとテスト用紙が配られ、テストが始まった。
『らしくないことしちゃったな』
そう思い僕はテストにとりかかるのであった。