第12話
『ここらへんのはずなんだけどな…』
白石から聞いた住所の近くまで来た。
周りの家の表札を見渡す。
『近藤、大村、田中、西村……あ、あった!橋本!』
家の前まで行きインターホンを鳴らす
ピンポーンピンポーン
誰も出ない
『あれ、一人暮らしなのかな?』
そんなことを考えながらインターホンを鳴らしていると。
ドンドンドンドン
慌ただしい足音が家の中から聞こえてきた。
『あ、きたきた。焦ってるんだろーなー』
足音が近くなり扉が開く。
「すいませんっ!え、あ、どちら様ですか?」
「えっ!?」
扉が開き顔を出したのは、橋本ではなくとてもイケメンな20歳前後の青年だった。
「え、あ、ここ橋本奈々未さんの家ですよね?あの、もしかして…彼氏さんとかですか?」
「え、あ!姉ちゃんのお友達の方ですか!僕、橋本奈々未の弟です!」
「あ!そうなんですね!あ、あの今日奈々未さんと友達数人と遊びに行く約束してたんですけど、時間になっても来ないんで迎えにきたんですよ…」
「あー、そうなんですね。すいません姉が…。」
「いえいえ、大丈夫ですよ!」
「僕が起こしたいところなんですけど、僕も寝坊しちゃって今日どうしても休めない授業があるので、起こすのお願いしてもいいですか…?」
「え、ぼ、僕がですか!?」
「はい…、すいません…。僕もう出ないと遅れちゃうんで、どうぞ上がってください。これ鍵です!姉がすいません…。では!」
そう言うと慌ただしく駅の方向へ走っていく弟くん。
『どうしようかな…寝てるとこ行って変質者に思われないかな…。。』
僕の元々の臆病な性格が出てくる。
躊躇しながらもおそらく橋本の部屋であろう部屋の前まできた。
『みんな待ってるし、いくしかないよな…!』
恐る恐るドアを開ける。
カーテンが閉まっていてベッドには橋本らしき女性が寝ている。
「はしもとー!おきろー!」
とりあえずボディータッチをしないようにと思い大きな声で起こそうとする。
が、さすがの朝の弱さなのか一向に起きる気配がない。
「あー!もういいや!」
何がが吹っ切れた僕は太陽の日差しを遮っているカーテンを勢いよく開け橋本がくるまっている布団を勢いよく剥がす。
「はしもとー!!!!おきろぉぉ!!」
自分でも驚くほどの声量だった。
「ん…、ふ、ふぁぁぁぉ」
起きたようだ。
「おはよーございまーす。」
「え、ぇぇぇぇぇ!?な、なんで直樹がいるの…!?って、きゃあっっ!」
自分の無防備な格好に気づき急いで布団に体を隠し直す橋本。
「別に変質者じゃないよ…、てか、今何時ですかー?」
「え、えっと…」
布団から手を出し携帯を手探りで探す橋本。
「8時10分。えっと、あぁぁぁぁぁ!」
「やっと、わかったか…」
「え、ごめん!ごめんなさい!他のみんなは?」
「みんなは先に行ったよ。僕が橋本起こす係引き受けてここまできたら弟さんが出てきて学校行っちゃうからなんかこんなへんな感じになったわけ。」
「な、なるほど…ってごめん!急いで準備するね!もう朝ごはん食べずに行こっ!10分だけ待って!」
「いや、橋本は身支度してて?キッチン借りていい?軽いものだったら作れるから僕軽く作るよ!1日動くのに朝飯抜きはきついでしょ?」
「え、いいよいいよ。私が寝坊したのが悪いんだし…」
「いいの、橋本に倒れられても困るでしょ?」
「え、じゃあお願いします…!」
申し訳なさそうに言う橋本。
「はいはい!動く動く!」
はっとした顔をし、急いで動き出す橋本。なんだか子猫みたいだ。