01 二度漬けは万死に値する
ショージが言った"いつもの例の場所"
俺たちが高校時代に溜まり場として使っていた引き取り手の無くなった廃れた廃車工場に辿り着いた。
錆び付いた重い鉄扉を開け、中にいるであろう者の名を叫んだ。
「・・・ハァ、ショージー!・・・ハァハァ・・・いんのか!」
俺の叫び声はだだっ広い工場内に響き渡った。
「そんな叫ばんでも聞こえてるって〜」
玉座の様に見立てた解体した車から取り出したシートに座っていたショージが左手を上げた。
「ショージ・・・ お前、菜々に何した!」
ショージの側近の様なガタイのいい男が大股で玉座に近付く俺の前に出ようとする。
「まぁそう、怒りなさんなって。あ、串カツ一本どう?」
激昂する俺とは対照的に笑いながら片手で男を御し、大皿に乗った串カツを薦めてきた。
「・・・いらん。菜々は?」
いつもの飄々とした態度に気勢を殺がれ、ショージに尋ねた。
「美味いのに・・・ はーい!連れて来てー」
串カツの串を地面に突き刺すとパンパンと柏手を打ち誰かを呼んだ。よく見れば付近の地面には何本も串が刺さっていた。
「ナオト・・・」
ガチャリと倉庫の様な小さな小屋の扉が開き女の子に連れられた菜々が出てきた。
「菜々!」
おぼつかない足取りの菜々に駆け寄り、身体をギュッときつく抱き締めた。
「大丈夫か?怪我とかしてないか?」
「う、うん。結城君が・・・助けてくれたから・・・・・・」
「そっか・・・よかった」
菜々の言葉に安心感から体の力が抜けていく感覚がしたが、なんとか踏み留まりショージの方を向いた。
ショージは顔の前で手を払い"気にすんな"といったふうなジェスチャーをしていた。
「んじゃ、主賓のナオちゃんも来たし・・・始めっぞ!」
玉座から立ち上がったショージが天井に向かって声を張った。