09 桔梗と桐
「なぁに?」
「お前・・・・・・、この一件と婦女暴行事件。関係してると思うか?」
俺の質問にケイラの眉がわずかに動いた。
「限りなく黒に近いグレーって感じかな?ま、8割程度やね」
「8割・・・」
2つの事件の関連性は報道されている情報と照らし合わせても、せいぜい6割弱。にもかかわらずケイラは8割と言う。
「ケイラ・・・ お前もしかして・・・」
「実は・・・・・・」
そう言って、リュックからタブレット端末を取り出し操作を始めた。
「警察の捜査資料を盗み見しちゃってたりして〜 テへ!」
俺に差し出された画面には未公表の情報も記されていた。
「テへ!やないでしょ?テへや。て言うか、ハッキングは卒業したんちゃうんか?」
「ナオ君、三つ子の魂百までって言うやん?簡単には止められへんって」
ケイラは俺の肩を叩きながら笑った。
ハッキング。
推定IQ200と言われるケイラの特技の一つ。ことPCに関しては地頭の良さに相まってか電子の海を縦横無尽に一切の痕跡すら残さずに泳ぎ廻れる。
実際、高校時代も教師のPCに忍び込み試験問題を抜き取ったりして何度か助けられたりもした。
さらに、その気になれば国を崩壊させることも出来るとか・・・
「さすが・・・金柑頭」
「え〜 それじゃあ私がいずれショー君に反旗を翻すみたいやん」
「ほな、そんときは俺が仇討つわ」
「ナオ君がハゲネズミなん?」
「その言い方やめや」
笑い合っているとポケットの携帯が鳴り響いた。
「ちょいごめん。・・・・・・はい?」
『雪村か!』
電話の相手は相変わらず大声で話す根岸のオッサンだった。
「なんすか?」
携帯を耳から少しだけ離し声を張った。
『お前ら一体なに企んどんねん?』
「はい?」
『あちこちに目ぇギラギラさせたガキどもが溢れとんのや!お前と結城の仕業やろが?またドンパチやろうとしとんちゃうやろな?』
「そんな訳ないでしょ」
『まぁええわ。ええか雪村!なんか問題起こしてもガキちゃうんやから、俺は助けてやれんぞって結城にも言うとけよ』
「解りましたよ」
口は悪いが一応、俺たちを心配してくれているのが言葉の端々から伝わってくる。なんだかんだ言っても俺たちの良き理解者だと思え心が温かくなる。
『ったく!定年間際の忙しい時に面倒かけんなよ。バカ垂れどもが!』
素敵な捨て台詞を吐き電話が切られた。
前言撤回やっぱりこのオッサンはキライだ。
「相変わらずやね〜 根岸さんも」
携帯を仕舞うとケイラが笑い掛けてきた。
「聞こえてた?」
ケイラが小さく頷く。
「ショージは本気なんやな?」
ため息混じりにケイラに尋ねた。
「もっちろん!こうなったショー君は止まらないよね」
愉快そうに笑みを浮かべたケイラが大袈裟な身振り手振りで俺の周りを歩いた。