07 もう1人の悪友
精神的な疲労を感じながら家に帰って来たのは空が茜色に染まり始める昼と夜との境界、黄昏時。昔の人は逢う魔が時と呼び恐れていたとも言われている。
ガキの頃から俺はこの時間帯が嫌いだった。何故かは解らないがどことなく嫌いだった。
「ただいま・・・っと」
コートをハンガーに掛け、ポケットからメモ帳を抜き取りベッドに寝ころび自分の書いたメモを読み返して事件を振り返ってみた。
「ふぅ」
やおら起き上がり、鞄からノートを取り出しキーワードとなりそうな単語を書き出しては円で囲んだり線で繋げたりして考えを巡らせた。
「う〜ん・・・」
何枚も同じ様な事を書いているうちに頭の中がこんがらがっていく気がして、傍らに置いたコーヒーに口を付けた。
「ん・・・」
いつの間にか、アイスに変わっていたホットコーヒーを流し込み立ち上がるとコートに袖を通した。
「行ってみるか」
ユーマの事件現場にたどり着く頃には辺りはもう暗くなり、外灯も無く人影も無かった。
「あれ?先客いてるやん」
事件現場でさらに考えていると背後から声がした。
「あぁ・・・お前か。何しに来たんや?」
「何しにって・・・ たぶんナオ君と一緒やと思うよ」
その人物は笑いながら近付いて来た。
「ショージに頼まれたんか?ケイラ?」
そこにいたのは中学時代からの付き合いのある悪友の1人。與儀 ケイラだった。