08 助っ人と急報
熱々のたこ焼きを頬張りつつ駅へと向かう道すがら俺はある人物へ電話を掛けた。
「もしもし。今時間ある?・・・・・・・・・そうかそうか。でよ、ちょっとお前に頼みたい事あるねん・・・・・・いや、むしろお前やないとアカン事やねん・・・・・・うん・・・・・・・・・そう・・・来て貰えんかな?・・・・・・頼むわ・・・・・・ホンマか!ありがとな・・・助かるわ・・・地下のなんばの前で待ってるから・・・・・・あぁ、また後でな」
根岸のオッサンと同じような頼み方でなおかつ、オリジナルよりも切羽詰まった感を醸し出したまま電話を切った。
「あの、誰にお電話したのですか?」
美味しそうなたこ焼きに舌鼓を打っている咲良に訊ねられた。
「ん〜?ま、ちょっとした助っ人かな」
駅へと続く階段近くの壁にもたれ掛かった俺は、含みのある笑みを浮かべて咲良に返事をした。
待つこと数十分後、呼び出した人物が姿を現した。
「お!来た来た。悪いな、急に呼び出して」
「ちょっと〜なんなん?あんな電話かかって来たら焦るやんか!」
その者は何を勘違いしていたのか、やって来ての第一声が俺に対する文句だった。
「謝ってんやし、そんな怒んなや〜菜々。コーヒー飲む?・・・・・・・・・無糖やけど?」
「ほないらんわ!アホ」
若干イラついている菜々をなだめる為に飲んでいたコーヒーを渡したのに、更に怒らせ突き返されてしまった。
「・・・・・・あれ?誰なんその娘?」
菜々が俺の側にいる咲良に気付き声を上げた。
「・・・・・・宮脇咲良です」
俺と初めて会って時の様に小さく頭を下げた。
「山田菜々です」
「安心してや咲良ちゃん、別にこの声は吹き替えられてるんじゃなくて地声やからな」
咲良と同様に頭を下げ自己紹介する菜々に隣から補足説明を付け足してた。
「ちょっと〜!・・・・・・結局何で私呼ばれたん?」
「この娘な根岸さんって覚えてるか?根岸さんのお孫さんやねん。ちょっと大阪観光してんやけどさ、俺そう言うん疎いし菜々の方が詳しいやろうし呼んでん」
「根岸さん!?名字違うで?」
相変わらずのアホ返答。現役中学生よりアホなんじゃないかと疑ってしまう。
「・・・・・・お前んとこもみんな山田って訳ちゃうやろ?」
「ホンマや!」
大人相手にするのもアホらしくなるような説明を終え、海遊館に行こうとしている事を伝えた。
「そういう事なら任しとき!私が色々と案内してあげるからね咲良ちゃん」
「・・・・・・あ、はい。よろしくお願いします」
2人が並んで階段を降っていくのを後ろから眺めていると携帯が鳴った。
「ショージか。どうした?」
『今どこにいるナオト?』
いつもの軽い様子を微塵も感じさせない2月の夜風のように冷えきった声が聞こえる。
「今か?地下のなんば駅やけど?」
『わかった。すぐに行くから待ってろ』
「待ってろってなん・・・・・・切りやがった」
俺の返答を待たずに一方的に電話が切られた。
先に降りていた2人に行けなくなった事を伝え、虎の子の諭吉を菜々に託し、1人大寒波の到来を予想される地上へと戻った。