07 友達
「・・・・・・ん?どうしたん?」
振り返ればたこ焼きに手を付けずの咲良が立っていた。
「あれ?やっぱ、普通のソースの方がよかった?」
「あ、いえ・・・・・・そうじゃなくてですね・・・」
何かを言いにくそうに伏し目がちに口ごもる咲良の前で腰を曲げ顔を覗き込む。
「うん?」
「あの、さっきの方も雪村さんのお友達なんでしょうか?」
少しだけ顔を上げた咲良が俺に尋ねた。
「へ?あ・・・・・・ま、友達っちゃ友達かな?うん。でも、商店街のやつらは顔見知り程度やけどね」
ヒロトに関しては友達で違いないが、他のは名前を知っている位でそこまで深い間柄ではなかった。
「そうですか・・・」
「なぁ咲良ちゃん、・・・学校楽しい?」
なんとなしに、先ほどの問いの裏にあるものが見えたような気がして咲良に質問を投げ掛けた。
「えっ・・・・・・」
「楽しいです」
少しだけ間を開け咲良が答える。
「そっか」
「でも・・・・・・」
「たまに楽しくないと思うこともあります・・・・・・ 友達があまりいないんです私」
思った通りと言ってしまえば彼女に失礼かも知れないが想像していた答えが返ってきた。
「それで、色んな人と親しげに話してる俺が気になったって訳やね」
「はい・・・・・・」
「・・・・・・よし!咲良ちゃん、ちょい携帯貸して」
「あ、はい・・・・・・」
不思議そうな顔をしながら持っている小さな鞄から携帯を取り出した。
「う〜んと。・・・はい、ありがとね」
ちょこちょこっと操作した後に咲良に携帯を還した。
「それ、俺の番号とアドレスね」
「えっ!?」
「いつでも、連絡してくれて大丈夫だからさ」
「はい!ありがとうございます」
今日一番の嬉しそうな笑顔を浮かべ咲良が自分の携帯を大事そうに両手で包み込んだ。
「でもね咲良ちゃん、一ついいこと教えてあげよっか?」
「・・・・・・?」
「最近さ、ドラマやらの影響かなにか知らないけど、友達が多いやつが偉いっつうか正しいみたいに思われがちだよね?」
咲良は肯定も否定もせずに黙って俺の話に耳を傾ける。
「でも、俺はあんなもんは嘘っぱちやと思ってんよ」
「嘘?」
「そ!・・・・・・心から信頼出来るやつが1人2人いりゃ十分幸せなんちゃうかな?」
「それじゃあ、雪村さんにもいるんですか?そんな人が?」
「俺に?どうかな・・・・・・おったらええな」
咲良の問いかけに笑いながらはぐらかし、駅へと再び歩き出した。