11 光の川
「・・・なんか悪かったな」
食堂から出て、来た道を戻りながら謝罪を口にした。
「せっかくの飯やのに、空気悪したやろ?」
「そんなん、ぜんぜん気にしてへんで!」
「そうか・・・」
「そうやって!面白い店やけど美味しかったし」
「そう言って貰えれば、安心するわ」
「安いし」
そう、確かにあの店はかなり安い。経営出来ているのかって位に全てが安く、ボリュームも規格外で2人で定食と一品を頼んでも、1人頭千円もしない。
「なぁなぁ」
「ん?」
戎橋付近で菜々がコートの袖口を引っ張った。
「せっかくやし、降りてみいひん?」
そう言って階段を指差した。
「ええよ」
贖罪とまではいかないが、彼女の意見を優先させた。
「わぁ・・・綺麗・・・」
道頓堀を彩る鮮やかなイルミネーションを眺めて菜々が嘆声をもしらた。
いつもは足を止める事もなく通り過ぎるだけの風景だが、改めてゆっくり見ると本当に綺麗だった。
電飾単体もさることながら、水面に反射する光がより一層と辺りを幻想的な空間へと変えていた。
橋脚に凭れ掛かり、はしゃぐ菜々と美しい光の川を柄にも無く眺めているとポケットの携帯が存在を主張してきた。
「ん?誰だよ?」
画面に表示された名前を確認した。
「はぁ・・・」
菜々と別の意味で面倒臭い奴からの電話だった。