07
「さて、次はアポロでの事件についてだね」
「被害者の島崎さんは何もないはずの部屋で圧死だったね」
高橋も一ノ瀬も読めない表情をしていた。
「まずは凶器…」
「凶器はイベントで使用するはずのアドバルーン」
「これはオーナーの一ノ瀬正造さん。君のお父さんから盗難の被害届けが出ている」
南が一ノ瀬に視線を移したが一ノ瀬は目線を逸らした。
「イベント会場から拝借したアドバルーンに水を入れての圧力で島崎さんを殺害した」
「その水はおそらく、島崎さんの部屋の裏にあるプールから引いて来たものだと思うんだ」
「アポロは元高校だった。そうだよね、一ノ瀬さん?」
一ノ瀬は瞑目し、南と目を合わせようともしなかった。
「しかも、君は水球部に所属していた。君なら学校へも、プールへも簡単に忍び込めるんじゃないか?」
「でも、プールから部屋までは距離もあるし、水の音で目を覚ますんじゃないです?」
高橋が始めて反論を口にした。
「そうだね。水を送る為にはホースもしくは、配管が必要だよな。……例えば、そこらに転がる配管とかがね」
「!」
「後はメンバーがなぜ気付かなかったか?その秘密は部屋割りにある」
「……」
「島崎さんと君の部屋の窓はプールに面しているのに対し、小嶋さんと横山さんの部屋からはプールも見えない。音も聞こえづらかったと思うよ」
「さらには、君が睡眠導入剤をみんなに分けた事で犯行中に目覚める可能性は格段に下がったはずだ」
みるみるうちに高橋の顔色が悪くなっていく。
「で、でも部屋には鍵が…」
「鍵が掛かってた?」
「えぇ」
「本当にそうなのかな?掛かってたかどうかは、誰にも証明は出来ないよね?」
「横山さんに合鍵を取りに行かせ、小嶋さんにもマネージャーさんを呼びに行かせれば約10分君は自由に動けたんじゃないかな」
その後も南は詰め将棋の様に高橋の発言を否定していった。
「……これが第二の事件への俺なりの考えだね」
南が話し終えた頃には2人とも下を向いていた。
「何か質問でもあるかな?」
うつむいている2人に南が声を掛けると突然、高橋が肩を震わせる始めた。