03
車を走らせ南が向かった先はとある撮影スタジオだった。
「こんにちは」
「南さん!?」
南が声を掛けたのは、ちょうど撮影を終えたばかりの高橋だ。
「どうしたのですか?」
「いや、ちょっと君の事が気になってね」
「えっ」
「……やっぱり、少し顔色悪いね」
驚く彼女の顔を覗き込み南が話し掛けた。
「鋭いですね」
「こうみえて刑事だからね」
表情を曇らせながらも無理に笑う高橋にいつものような軽い口調で南が答える。
「もう仕事終わったの?」
「はい、今日は撮影と取材だけだったので。これで終わりです」
その言葉に南は違和感を覚えた。
「大変だよね…」
「?」
「ほら、メンバーが3人も抜けちゃったらさ。戸賀崎さんも頭を悩ませたしね」
「そうですね……。キャンセルになる仕事も少なくはないですね」
「あ、そういえばさ」
さらに影を落とす彼女に場の空気を変えるべく南が話題を変えた。
「昨日の公演観させてもらったよ」
「そうらしいですね。優子が言ってましたよ。虜にしてやったって」
「いやいや、確かに良かったけと、そこまでなってないよ」
高橋の顔に再び笑顔が戻った。
「じゃあ今度は私たちの公演も観に来て下さいよ」
「ホントに?……でも、虜にはならないと思うよ」
「えぇー」
「ま、時間があればね。行かせてもらうよ」
「ぜひ、いらし…」
高橋の言葉を遮る様に南の携帯が震えた。
「ちょっとごめんね」
高橋に一声掛け席を立ち少し離れた位置に移動した。
「はい南…あぁ東山か。サボってる訳じゃないって………えっ!……場所がわかった?…本当か!……あぁ…あぁ………すぐ戻る」
携帯を切り高橋の元へ戻っていった。
「…お仕事の電話ですか?」
「聞こえてた?」
小さく高橋が首を縦に振る。
「…じゃ、戻るよ。今度公演も観に行かせてもらうから」
「あ、はい」
南は高橋に別れを告げ、南は出口へと走っていった。