第四章
04
 南の呟きを受け車は"アイドル"の元へと向かう。

「…あの先輩?」

「ん〜」

「なんと言うか…その…焦ったりしないんすか?」

 目をぎらつかせ運転する東山とは対称的に悠然と助手席で缶コーヒーを味わっている南。

「焦りねぇ…」

「そうっすよ!だって、48時間しか無いんすよ」

 コーヒーを飲み干した南が東山に顔を向けた。

「そりゃ違うな。48時間"しか"じゃなくて48時間"も"だろ」

「それは……」

「それにさ、あの時間制限は犯人の焦りの表れだと思うんだよな…」

 ドリンクホルダーに空き缶を置き南が独り言のように言った。

「えっ!どういう事っすか?」

「ま、勘だな。勘!」

「勘すか…」

「あんた、刑事の勘をバカにしてんじゃないわよ」

 あからさまに、がっかりする東山に西尾っぽく反論した。

「あっ、今の西尾さんっぽいっす」

「だろ?やっぱ長くコンビ組んでるとさ口調が似………」

「どうしたんすか先輩?あ、そろそろ劇場に着きますよ」

「口調が似る……?」

 南の脳裏に先ほどの映像とあの人物がリンクした。

「…先輩?聞いてます?」

「東山…」

 ゆっくりと顔を向け、東山の肩に手を掛けた。

「行ってもらいたい場所があるんだ」

「イヤっすよ!せっかく劇場に来たんすから僕はどこにも行かないっす!」

「頼む!」

「イヤっす!絶対イヤっす」

「行ってちょこっと話聞くだけだからさ」

「ズルいっすよ!先輩だけ楽しむつもりなんでしょ」

「じゃ、よろしくな」




 不毛な押し問答を命令という名の強行策で無理矢理突き通し、東山を追い払った。

(このおっさん話クソ長いもんな…聞いてられないっての。ま、東山なら多分大丈夫か)

 根拠のない自信で己を納得させ南は目的の場所を見上げた。






■筆者メッセージ
次回は久しぶりにメンバーを出します

って言うかメンバーがほとんど出ない小説ってアリなのかな?


絹革音扇 ( 2013/12/30(月) 00:36 )