二束目
第20花ーカランコエ
今日も菊野君と隣で講義を受けて、そのままサークルに向かった。
講義中もだし、サークルでも菊野君はなんだか今日は冴えなかった。何か原罪を背負って生きているかのようだった。そして菊野君が抱えるその原罪が菊野君自身を苦しめているように見えた。


「菊野君、なんかあった?」
先輩方も帰ったサークル終わりにそう聞いた。どうしても聞かずにはいられなかった。
「いや、なんも」

私と目を合わせることなくボソッと小さくつぶやく声を私は逃さなかった。
「いや、絶対何かあるでしょ!それを聞くまでは今日は帰れないなぁ…」
「いや、帰れよ」
「だーめ。何かあるなら聞くって。ご飯でも食べながらね。」

私にしては珍しく強引な気がした。けれど、それ以上に菊野君を放っておけなかった。彼のあんな顔は見たくないから。


大学からほど近いファミレス。私も何度も来たことはあるけど、男の子と来るのは初めてだった。別にそういう関係ではないにしろ、他のお客さんだったり店員さんには恋人同士のように見えるのかな、なんて想像もした。


「んで、菊野君何かあったの?」

他愛もない話をしながら食事を終え、私の前にはドリンクバーの紅茶、菊野君の前にはブラックコーヒーが置かれていた。

菊野君は目線を落として、話してもいいものなのか迷っているようだった。菊野君が見つめるコーヒーカップの中には漆黒が広がっている。


「俺のことを大切にしてくれる人、『ここにいてもいいよ』って言ってくれる人。ありがたいことにこんな俺にそう言ってくれる人がいるんだけど、その人に対してしてはいけないことをしてしまったかもしれない」


私は、菊野君の言うその人が梅澤先輩のことだと直感的に分かった。けれど、そこについて触れる気はさらさらなかった。それ以前の問題として、恋愛感情の有無を抜きにしても菊野君にとって居心地のいい存在が既に菊野君にあるということが大問題だった。


「あんなに俺のことを認めてくれて…。なのに俺は…。」


きっと冷静さを欠いていたんだと思う。


「菊野君、“僕”がついてるよ?ずっと一緒だよ?そう約束したでしょ?“僕”はその約束、守ってるんだよ?」

私が言った言葉に即座に反応した菊野君は驚きを隠せないようだった。


「“僕”…?約束…?もしかして…」

菊野君が気づいた時にはもう、私の失敗をとり繕うことなんかできやしなかった。だから、ずっと秘密にしてきたけど開き直るしかできなかった。






「そう…、“僕”だよ。ずっと菊野君といるって約束した“僕”だよ。」

■筆者メッセージ
二束目、これにて終了となります。たぶん、さゆにゃんが誰なのかというのは想像がついていると思われます。次章はまた、過去編の予定です。お楽しみに。

さて、告知している通りこのあと23時から、棚加さん、イヴさんと座談会開催させていただきます。枠は棚加さんに開いてもらうので始まったらリンクツイートしますね!ではまた後程。
Hika ( 2019/09/07(土) 21:25 )