二束目
第14花ーラナンキュラス
カーテンの隙間から届いた日の光で目を覚ました。一瞬、ここがどこか分からなかったが昨日の記憶を手繰り寄せてようやく合点がいった。俺は先輩の腕の中で朝を迎えた。


「このほうが春樹君はいいでしょ」と昨日の夜言った先輩は身に着けていた部屋着から下着まですべてを取り払って俺を抱き締めながら眠りについた。普段なら絶対に欲情していたであろうが、昨日はそんな元気すらないほどに動揺が勝っていた。

「すいません、先輩」
「いいの、いつもならってことでしょ?」
「先輩はすごく魅力的な女性です。今でも自分がそんな先輩と関係を持てているのが不思議なくらいです」
「春樹君も十分すぎるくらいに魅力的だよ」

先輩はそう言って俺にキスを落としてから目を閉じた。これ以上話すことはなかった。俺も目を閉じてやってくる眠気に意識を手放した。あれだけ寝付けなかったのが嘘みたいにスッと眠りに落ちた。



目が覚めてから先輩の安らかな寝顔を見ていた。綺麗な寝顔だった。昨日先輩に言った「関係を持てているのが不思議」というのは本心だった。なぜ、とは思ってしまうがそれなりの理由があるのだろうし、俺も先輩に秘密を打ち明けていないのだからお互い様だ。
それに、もし俺が打ち明けたとしても先輩にも打ち明けろというのは自分勝手な話だ。


「春樹君、朝から難しい顔してるね。考え事?」
急にそう言われてびっくりした。
「びっくりしたでしょ」
いたずらっ子のような目を俺に向けてクスクスと先輩は笑っていた。幸せで平和な朝だった。


「昨日はありがとうございました」
「良いんだってば。誰だってそんな日もあるし、心が泣きたいときはそれに従って黙って泣けばいいの。私はそれで春樹君を笑ったりしないし、重いとも思わない。頼ってくれて素直に嬉しかったよ。だから、何かあったらいつでもおいで?」


やさしさに触れたのはだいぶ久しぶりな気がした。
「ありがとうございます。また、何かあったら、ね」

先輩にペコっと頭を下げて先輩を見るとすごく優しい目をしていた。

■筆者メッセージ
お待たせしておりました。2週間ぶりですね。やっとこさ夏休みに入りましたので少しずつ更新していきます。今月末になるとまた忙しくなるのでそれまで何とか頑張ります。
Hika ( 2019/08/08(木) 11:11 )