名もなき花の物語 - Take my mind off
B
気づけば俺の生きがいはどうやって両親をその手で殺めるかを考えることだった。ロボットのように家事をし、母親のサンドバッグとして苦痛な時間を過ごしてもそのことを考えていれば耐えられた。今思えば、異常な精神状態だった。当時は本当にそれだけが生きがいだった。


「は?何でアンタ殴られてるのに笑ってんの?キモいんだけど」


そう言われた気がする。言われるまで自分でも気が付かなかった。殴られているのに笑っている。狂気だ。俺自身でさえそう思う。だからこのことがクズの父親に伝わるのもおかしくはない話だった。家庭を持っていながら今まで別々だった両親をこんな形で本来あるべき姿に戻すなんて思ってもみなかった。


俺が小学4年にあがった頃だった。母親は出かけていて何もない昼下がりだった。普段ならそんな時間には帰宅しない父親が何の前触れもなく帰ってきた。やはり酒臭い息を吐き散らしながら狭い部屋に入ってきた。そして何を思ったか急に俺のことを蹴り上げた。


「おめぇ、殴られても蹴られてもヘラヘラしてるんだってな?ちょっくらストレス発散させろやぁ?」

父親の暴力は母親のそれとは比べ物にならなかった。けど、絶対に涙は流さなかった。終わってみれば顔は腫れ上がって血が滲み、体はどこを見ても内出血を起こし、青く変色していた。




いい加減に我慢がならなかった。何のために俺はクズの父親と母親のもとに産まれたのか。そもそもあの二人のもとに産まれたということを考えるだけで吐き気がした。

想像の中で両親を何度もなぶり殺したが、それだけではいよいよ限界だった。

『実際にあの二人を手にかける』

そう決まれば後は具体的にどんな手段でやり遂げるかが問題だった。あの二人から解放されるのだから、俺が捕まってしまっては何の意味もない。つまり、何者かの犯行に見せかけなければならない。これが何よりも一番難しいことだった。


そして俺は最大限に頭を回転させてある方法を考えつく。しかし、この方法はあまりにも危険すぎた。俺は躊躇して他の方法もあれこれと考えたが危険を孕むこの方法以外は現実性がなさ過ぎた。そもそもの現実性が低いのは百も承知だった。しかしこの当時10歳にして人生最大の賭けに打って出る以外にこの状態からの解放はありえなかった。


方法が決まれば後は入念な下調べだ。


■筆者メッセージ
いやぁ、クズですねぇ。自分で書いておきながら思います。
Hika ( 2019/06/27(木) 11:01 )