一束目
第4花ーウメ
先日、小百合にご飯を奢って見事に金欠になってしまった。ホントにステーキ行くとは思っていなかった。俺の考えが甘かったようだ。とは言え小百合は小食だったので助かった部分はあったが、しっかり高い肉をパクパクと食べていた。

なんとなくおいしそうに食べる小百合を見て少しだけ和んだ。けど、それを小百合に伝えるとまた「馬鹿にしただろー!」なんて言われそうだから言わなかった。


穏やかな気持ちでいつものルーティンへ。同じ日々の中へ自身を投げ入れる。すると、意識することもなくいつの間にか大学の講義は終わっている。それなりに疲れはするけれど、あくまでそれなりだ。それよりも今はアルバイトに精を出さねばならない。金欠なのだ。


「お疲れ様でーす」
「春樹くんお疲れ」
声をかけてきてくれたのは学年一つ上で同じ専攻の梅澤先輩だ。
「春樹、今日はキッチンのヘルプ入って!」
厨房の奥から声をかけてきたのはこのカフェのオーナーのかりんさんだ。
「了解です」
裏の更衣室で着替えを済ませてキッチンに入った。うちのカフェは簡単な料理も出すからキッチンに人手が必要になる。店内はそんなに広くないのでホールは1人で回せる。

「ナポリタンとコーヒーブラックで!」
ホールから先輩の声が聞こえた。
「りょーかい!」
返事をしてパスタを茹で始めるのと同時に具材を炒め始める。手際よくパスタの湯切りを済ませてフライパンの具材と絡める。あっという間にナポリタンができあがる。このバイトを始めてからだいぶ上達したと思う。


いつもより少し多めのお客さんが入り、気づけば閉店の22時だった。
「2人ともお疲れ様!残りでよければ賄いあるよ!」
かりんさんが声をかけてくれた。
「いただきますね」
先輩が先に箸をつけた。続いて俺も食べる。あっという間に平らげた。


更衣室に行くと先に着替えを済ませた春物のコートを着た先輩がいた。
「先輩、お疲れ様です。」
「お疲れー。」
そう言って先輩は更衣室を出ていった。着替えがちょうど終わった時にLINEの通知が来た。

『20分後くらいにうちに来てね』
梅澤先輩からのLINEだった。

■筆者メッセージ
久々の1日2回更新です。「坂道高校」完結しましたね。イヴさん、お疲れさまでした。次回作もあるらしいので期待です…!


あんな怒涛の更新はできませんがマイペースに頑張ろうと改めて思った夜更けでした。
Hika ( 2019/05/20(月) 03:23 )