第29話
あれから特に進展もなくただただ日々が過ぎていった。気付けば入試当日。会場に向かうバスの中だった。
昨日、日奈子や純奈と決起会なるものをして英気を養った。みんなで合格しようねなんて言ってご飯を食べた。そんなことを思い出しながら自分を奮い立たせた。
不安材料と言えばあの手紙をもらったバレンタイン。その日からずっとその真意が気がかりで勉強になかなか身が入らなかった。けど、たかだか2週間ほどのこと。これまで勉強してきた貯金があるのだから大丈夫。そう言い聞かせて入試に向かった。
結果から言うと惨敗だった。惜敗どころじゃなかった。解答速報を見ながらの自己採点は問題用紙が涙でぐしゃぐしゃになった。自分の今までの努力が足りなかったようだ。悔やんでも悔やみきれなかった。
着信音が鳴った。スマホを見れば日奈子や純奈から『お疲れ様―!』とLINEが来ていたが、どうも返信するメンタルは持ち合わせていなかった。
次の日になんとか返信はした。けど、きっとすごく暗い雰囲気が読み取れてしまったのか、2人とも『どうだった?』とは聞いてこなかった。2人なりの優しさなのだろうが、気を遣わせてしまっているということに胸が痛んだ。
今、2人は何を思っているのか。そして、未だ脳裏にちらつくあの手紙の真意。高校はどっちにしても離れるのは決まっている。聞かなければこの先に進めない気がした。それは僕だけじゃなくて手紙の主もそのはずだ。だからきっと僕に手紙をくれた。
いい加減、はっきりしなきゃいけない。自分が招いたことだ。小さいけれどきっと大きな決心なはずだ。
何もかもをはっきりさせる。それは僕の気持ちもそうだし、手紙の真意もそう。決戦は卒業式だ。