第3章〜慣性〜
第21話
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「外力が加わらない限り…」
あれからずっと悩んでいる。そろそろ担任からは「いい加減に決めろ」なんて言われているけど、そんなにすぐに決められるはずもない。

「運動している物体は等速直線運動を…」
5時間目の理科の授業は全くと言っていいほど頭に入ってこない。というか、ここ数日は勉強なんか手についていなかった。

「このような法則を…」
ため息すると幸せは逃げるなんて言うけど、それでいくと僕はどれだけの幸せを逃しているのだろうか。今のところ僕の普段通りと何ら変わりはない。

「野田君、答えて?」
「はい?」
何も聞いていなかったツケが回ってきた。
「ちゃんと授業は聞いてね?野田君」
「すいません」
なんとなく自分らしくない。黒板が埋まっていくのを眺めながらそう思った。
『慣性、か…。』

人間の気持ちを表してくれる法則はないものだろうか。気持ちを数値化して可視化できればどんなに楽だろうと。相手の思うことがわかれば苦労なんかしなくて済むのに。けれど、それじゃ楽しくないという人もいるのだろう。感性は人それぞれだ。
部活を引退してから、僕は教室で勉強してから帰るのが日課になっていた。勉強とは言いつつもやってくる友達と長話をして、いつの間にか下校時間なんてのが普通だった。今日やってきたのは純奈と日奈子だった。

「英晞、理科教えて!」
「僕最近、授業集中できなくてあんまし聞いてないんだよね…」
「英晞が珍しいじゃん?」
「とりあえずワークと教科書とってくる!」
日奈子は自分の教室に戻っていった。僕のクラスメートはみんな帰って教室には純奈と僕だけしか残っていなかった。
「悩み事?ま、なんとなく察しはついてるけど」
「やっぱり純奈は何でもわかるんだな」
「じゅんから悩ますようなこと言ってるのは分かってる。そう簡単に整理がつかないってことも」
「僕もこんな経験初めてだからさどうしたらいいのかもわからなくて手探り状態さ。けど、純奈が気持ちをストレートに伝えてくれたことに対しては悪く思ってたりはしないから大丈夫だよ」
「ならよかった。自分で言うのもアレだけど相談はいつでも乗るからね」
そう言って純奈は微笑んで持ってきた問題集を解き始めた。

「英晞お待たせー!」
「どこがわかんないのさ」
「ここの力の法則?のとこかな」
えへへと笑いながら日奈子はその問題を見せてきた。ふと視線を純奈に向けると、ちょうど顔をあげた純奈と目が合う。「ん?」と首をかしげて再び純奈はシャーペンを走らせ始めた。
「ね、英晞どう解くの?」
「あぁ、ちょっと待ってね今から考えるから」

やっぱり僕は相手の思うことが見えた方が楽だと思う。

■筆者メッセージ
どうもHikaです。PCが不調なのに、イヴさんに脅されたので更新します。次のイヴさんの更新に期待しましょう!!(圧力)

最近思うのですが「僕等のあの日々」を削除しようかなぁなんて。個人的には拙い部分ばかりだし、正直見切り発車で書き始めた感が半端なくて。構想がある程度あって書くのとそうでないのとではやっぱり違うので。この理由とは別に、もし私が新作を書きたくなった時に足かせになるのかなとかいろいろあります。批判等もあるでしょう。一番いいのはリニューアルして書くことなのでしょうけど。これについて意見がおありの方がいらっしゃいましたら教えてくださいよろしくお願いします。

ではこの辺で。次は来週くらいに更新できればいいなと思います。
Hika ( 2019/03/27(水) 03:44 )