第17話
初恋で振られた。やっぱり初恋は実らないらしい。そんなことを歌った曲もあった気がする。僕はだいぶへこんでいた。けど、そんなことは表に出さないでいつも通りを心がけてふるまっていた。もちろん、日奈子とも普段通りに接していた。
告白してから1週間が経った。それでも僕は立ち直れないでいた。今日は土曜日だけど、顧問がいないせいで部活は休みだった。告白する前は頻繁に鳴っていたLINEの通知も鳴りを潜めていた。僕自身が関わりを断っていたような節もあったけど、それでも連絡がないのは寂しいような気もする。だからと言って自分からLINEを送る気にはなれなかった。特に2人にはどんな顔をして、というのはおかしいけれど、どんなふうにコミュニケーションをとればよいのか、皆目見当もつかなかったし、休みの日まで強がってなんかいられなかった。
そんな中、僕のスマホが久々にLINEの通知を知らせた。純奈からだった。
『無理してない?じゅんは分かっちゃうんだからね』
いつも通りにふるまっていたはずだった。けれど、純奈にはお見通しのようだった。続けて純奈からLINEが届く。
『いつでも電話してきていいよ。話聞いてあげるから』
僕は迷った。電話をしてもいいのかどうか。しかも、その相手はうぬぼれでもなんでもなく僕のことを好きな人だし、その人の口から恋敵の話を聞く。そんな辛いこと、経験するのは僕だけで良いと思っていた。弱さを見せたくないとかそんな考えからじゃなく、ある種の純奈への思いやりのつもりだった。そんな負担をかけさせたくなかった。だから、僕は迷った。
純奈のLINEは既読を付けたまま返事をしていなかった。ずっと僕は迷っていた。僕はある賭けをすることにした。純奈からLINEが来たのは午前中のこと。そして今はもう日付をまたいで30分以上が経っている。今、LINEの返事をして純奈に反応があるかどうか。
『まだ起きてる…?』
返事が来ないことを祈りながら送信して、僕はベッドに身を預けた。けれど、僕の祈りは無慈悲にも届かなかった。
『起きてるよー どうかした?』
もしかしたら、僕の本心は話を聞いて欲しかったのかもしれない。それは誰が相手でもよかったはずだ。けれど、タイミングを良いことに純奈に頼ってしまった。純奈への思いやりなんて建前だったのかもしれない。そんなことを考えながら、自分に嫌悪感を抱いた。嫌悪感に吐きそうになりながら、純奈に電話をかけるためにスマホを手に取った。