第2章〜動揺〜
第16話
日奈子「ありがとう英晞…けど、英晞はどうしてもそういう、なんて言うのかな?恋愛対象?ではないんだよね…。嫌いなわけでは全然なくて、むしろ大好き。だけど恋人としてじゃなくて、優しいお兄ちゃんって感じなんだよね」
僕は顔をあげた。落胆した顔を見せてはいけない。そんな気がした。
英晞「そっか…。でも、嫌われてないってことも分かったし、そういうところを評価してくれてるのはすごく嬉しいよ。ありがとう」


僕は強がっていた。だからたぶん、僕の言葉は震えていたと思う。涙も我慢した。けど、日奈子は全部分かっていたんだと思う。
日奈子「ずっと英晞らしくいてね?そのままの英晞が好きだから!これからもよろしくね」
そういった日奈子は僕を抱きしめてくれた。彼女の目尻が光っていたことはたぶん、僕の見間違いだろう。


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陸「振られるのは分かってたけど、そんな感じだったのか…」
英晞「優しくしすぎたのかなぁ…って後悔してる」
陸「けどよ、それが英晞のいい所じゃないの?」
僕は一つため息を吐いた。

英晞「優しさは、時に人をダメにするんだよ?優しすぎることが仇になることなんてたくさんあるよ」
陸「そんなもんか…。難しいな」

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その日の帰りは何事もなく、3人でまた電車に揺られて帰った。純奈には帰宅してから連絡することにしている。そう2人で決めた。いつも通り、くだらない話ばかりして時間はあっという間に過ぎていった。僕は純奈に落胆を悟られないように、ふるまっていた。いつもよりも少し高いテンションで。それでもきっと、純奈は気づいていたと思う。


最寄りの駅について、僕と2人は別れた。2人に僕が手を振った時、純奈が何かを言いたそうだったけど、それに気づかないふりをして見送った。


1人の帰り道。あたりはすっかり暗くなって、等間隔に並ぶ街灯だけが道を照らしていた。我慢していたはず。けど、その我慢は家に着く前に決壊した。僕の頬では、幾筋も涙が転がって、乾いていたアスファルトの上に落ちて黒い染みを作った。僕は走った。走れば、何もかもを忘れられると思ったから。けど、そんなに現実は甘くなかった。

■筆者メッセージ
昨日更新すると言っておきながら、バタバタしてしまって更新できなかったので早朝更新します!

感想お待ちしてます。
Hika ( 2018/08/31(金) 04:50 )