第3話
美彩「あのさ…3年前のことだけど…」
優暉「姉さん、その話はしないって…」
優暉の声からは明らかな動揺が伝わってきた。
美彩「分かってる。何も聞かない上で、私は優暉のことを支えてきた。けど、最近の優暉は魂の抜け殻みたいだよ。ねぇ、優暉…」
優暉「止めろって!」
美彩の話を遮って優暉は声を荒らげる。
美彩「でも聞いて!」
美彩の鬼気迫る何かを感じたのか優暉は再び開きかけた口を閉じた。
美彩「3年前、優暉の彼女の未央奈ちゃんが飛び降り自殺をして、その場に優暉が居合わせていた。警察からそういう電話が来て私は警察に向かった。警察署で私は状況を説明された。未央奈ちゃん直筆の遺書があったこと。優暉が未央奈ちゃんに呼び出されて現場に来たこと。その呼び出したメールが確認されたこと。未央奈ちゃんが飛び降りた瞬間を目撃した優暉がショック状態にあること。そして、事件性は無くて自殺で結論が出たこと。その決定打に目撃者がいたこと」
美彩は一度話を区切った。そして、ためらいながらもう一度口を開く。
美彩「でも、本当にそうなの?優暉、最近うなされてばっかりだし、ことある事に『俺は悪くない』って言ってるから…」
美彩が優暉に問いかける。目を見開いた優暉だが、少しの間をあけて口を開く。
優暉「その通りだよ姉さん。俺はあの日、未央奈に呼び出された。俺が呼び出された雑居ビルの屋上に上がると未央奈は俺の方を向いて、『ありがとう』って言って、俺の視界から消えていった」
優暉から嗚咽が漏れるが、それでも優暉は続けた。
優暉「未央奈がそんな思い詰めてたなんて知らなかった。なんで、気づいてあげられなかっただろう…って」
美彩「そっか…ごめんね疑ったりなんかして。どうしても最近の優暉の様子がおかしかったからさ…ごめんね」
美彩がそう漏らすと、優暉を抱き寄せ昨日のように頭を撫でる。時刻は0時を回っていた。
美彩「ごめんね…そうだよ…優暉は何も悪くない。疑うなんてばかげてるよね。そう。絶対に悪くなんかない」
未央奈の命日まであと18日ー。