第14話
雨が2人に打ちつけていた。しばらく沈黙が続いていたが、飛鳥が唐突に大声を出した。
飛鳥「なのに…!なのに!優暉がやっと私のものになったと思ったのに…!優暉は私のことを見てくれない!偽りの愛を注いでいた未央奈ばかり見てる!!」
優暉「それは…俺が未央奈を…」
飛鳥「そんなこと知ってる!『 優暉が何をしたって受け入れるから』って私は付き合い始めたあの日に言った。私は受け入れるのに、優暉は受け入れてくれない。私を見てってお願いもした。なのに、なのに…。優暉は私のものなの。誰にも渡さない」
飛鳥は優暉の方へ足を踏み出した。
飛鳥「優暉は私のもの。私は優暉のもの。それでいいじゃない。私は優暉を断罪するつもりなんか更々無い。人殺しの優暉を愛してあげられるのは世界で私しかいないんだよ?それに気づいてよ。何なら、私も優暉に殺されたって良い。それで優暉の中に生き続けられるなら。優暉に思われ続けるなら」
優暉は飛鳥の歪んだ愛に恐怖さえ覚えた。そして優暉は嫌悪に満ちた目を飛鳥に向けた。
飛鳥「そう…その目だよ。愛してもらえないんだったら、別の方法で優暉の中で生きる。さぁ、私を嫌いになって!もっと私を憎悪に満ちた目で見て!その視線で私を灼いて…!!私を殺して…!!」
優暉「ふざけんな!!そんなことできるわけねぇだろ!」
飛鳥「するんだよ、優暉は。私がそうさせるから」
3年前の未央奈と同じ台詞を飛鳥が言った。
飛鳥「『 俺は何も悪くない。俺は何も悪くない。』だっけ?そんなわけないじゃん。優暉は未央奈を殺したんだよ。その手で。その偽善で!」
優暉の中で何かが渦巻いている。優暉に猛烈な吐き気が襲う…。
優暉「ち、違う!あれは俺じゃない。俺じゃ…」
飛鳥「優暉だよ」
飛鳥が静かに言い放つ。そして再び口を開く。
飛鳥「人殺し」
優暉の理性が弾け飛んだ。優暉は飛鳥を屋上から突き落とした。が、その瞬間に飛鳥は優暉の腕をつかむ。全てがスローモーションに感じられる世界で飛鳥が満面の笑みで言った。
飛鳥「これで、優暉は私のもの。私は優暉のもの。やっと…やっと1つになれる…」
2人の眼前には水たまりのできた黒いアスファルトが迫っていたー。