第53話
巧輝の誕生日から数日が経った。数日のうちに七瀬と姉の麻衣が別々に来てくれたが既に2回目の定期試験まで2週間を切っていたため、それ以降のお見舞や面会は巧輝が遠慮していた。
それでも案外巧輝は退屈を感じずに過ごしていた。車イスの操作も自分でできるようになっていたので、病室にいる時間よりも入院している人が集まる談話室で過ごす時間が増えていた。その理由はとある少女との出会いがきっかけだった。
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入院してからすぐのある日、病室の掃除をするということで、巧輝は談話室でその時間を過ごすことになった。巧輝が談話室にあるテレビをぼぉっと眺めていると急に、
??「こんにちは!」
と声をかけられたのだ。それも急なことだったので、巧輝は驚いてしまった。
??「あ、急に話しかけてごめんなさい びっくりしましたか?」
巧輝「いや、大丈夫だよ」
??「それなら良かった あ、私は高山一実って言います 中3です」
巧輝「深川巧輝、高2です よろしく」
一実「え?巧輝ですか?すいません、年上でしたか 同年代くらいの人がいるなって思って声をかけちゃいました」
巧輝「全然大丈夫だよ 確かに病院だと同年代くらいの人としか雑談なんてできないもんね」
一実「そうなんです それで、巧輝さんを見つけて嬉しくなって声かけたんです」
巧輝「ちょうど良かった この病棟で話す相手がいないと退屈だなって思ってたから」
一実「そうなんですか?」
巧輝「お見舞で来てくれる人と常に話ができるわけじゃないでしょ?」
一実「確かにそうですね」
巧輝「お互いに退屈しのぎできてイイじゃん」
一実「そうですね それじゃあ、これからもじゃんじゃん話しかけますね」
巧輝「もちろん!」
一実「じゃあ、しゃべりましょう!」
それから、巧輝は部屋の掃除が終わったと看護師から声がかけられても一実とずっと話をしていた。
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この出来事があって以来、毎日のように一実と談話室で話す日々が続いていた。病室にいてもただ置物になってしまう程することが無かったので、今日も一実が居るであろう談話室へと車イスを転がすのであった。