第46話@
それは突然だった。夏休みも終わり、9月まであと1週間とちょっとの土曜日。私は部屋で来週に迫ったテストの勉強をしていた。午後からは巧輝たちが部活を終えて、一緒に勉強するはずだった。
テストが終わって数日経った7日は巧輝の誕生日だということを奈々未から以前聞いていた。それは、私の誕生日が終わって数日後のこと。
七瀬「なぁ、ななみん。巧輝の誕生日っていつなん?」
奈々未「確か、9月7日のはず。一応、帰ったら確認してみるけど」
七瀬「ありがとう、ななみん」
奈々未「全然良いけど、本人に聞けばいいじゃん?」
七瀬「それもそうなんやけど、恥ずかしくて」
奈々未「ふぅ〜ん。ま、いっか」
そう言うと、5時間目のチャイムが鳴ったので、その場はそのまま終わった。奈々未は何か言いたげだったけど。
インターハイ後の東京デートはすごく楽しかった。東京なんて、北海道にいるとめったに行けるところではないから。大阪からも東京に行ったことは無かった。だから、東京は右も左もわからないくらいに未知の場所だった。巧輝もそのはずなのに、ちゃんと行き方とかを調べていてくれて、道中は何もアクシデントが起こらなかった。
やっぱり、巧輝はかっこいいと改めて思った。考えてみれば、デートだとかはいつも巧輝が引っ張ってくれていた。転入したての4月の時もそうだし、乃木高祭の後に行ったデートもそう。だから、今回の巧輝の誕生日には私からデートに誘って、私がデートプランを立てようとしていた。数日前からインターネットで札幌近辺のデートスポットを調べたり、母さんに聞いたりもした。まぁ、一家で初めて北海道に来たから、後からよく考えると母さんもわかるわけないんだけど。
そんなこんなを経て、だいたいのプランは決まっていた。もちろん、既に巧輝をデートには誘っている。あと2週間に迫ったその日を楽しみにしながら勉強をしていると、いつの間にか時計は正午を少し回っていた。あと1時間もすれば巧輝や奈々未、俊がやってくる。勉強を一時中断して、リビングへ行こうとしたその時、七瀬のスマホが鳴った。
ならが電話を取ると、いつもクールな奈々未が取り乱した声で言った。
七瀬「もしもし?」
奈々未「なぁちゃん!?」
七瀬「そうやけど、ななみんそんなに焦ってどうしたん?」
それに続く奈々未の話を聞くと、七瀬は目の前が真っ暗になっていた。
奈々未「巧輝が、車に轢かれてっ・・・・・・! ・・・・・・なぁちゃん?なぁちゃん!?」