高校2年生8月
第41話
試合が始まってすぐの出来事に選手達は全く反応できなかった。観客席でさえも静まりかえってしまった。硬直状態から最初に復帰したのは巧輝。
巧輝「まだまだ試合は始まったばっかりだ!たくさん時間は残ってるから、逆転なんかすぐにできるぞ!」
巧輝のその声を聞いて、乃木高校の選手達は金縛りから解かれたように声を張り上げる。
「そうだ!まだ時間はある!」

そして、ボールが中央にプレースされて試合が再開する。巧輝から、1度DFラインの底までボールを下げる。受けたのは侑汰。ボランチの俊を交えて4人でボールを回しながら好機をうかがう。

ちょうど俊がボールを受けた時、相手の間に穴ができた。すぐにそこへパスを出す。針の穴を通すようなパスは雪弥のすぐ近くのスペースへ。
一瞬反応が遅れた相手を後目に見ながら、雪弥がボールを受け前を向く。すぐに雪弥へプレスがかけられるが、雪弥は冷静に体を入れボールを奪われない。そのままボールをキープしながら、味方の上がりを待つ。ボールをキープする雪弥のすぐ後ろを俊が上がっていく。雪弥は俊に向けてヒールパスを送る。

そのボールは相手の股の間を抜け、俊に渡る。ボールを受けた俊はドリブルでつっかけていく。しかし、ここで相手のDFのスライディングでボールを奪われてしまう。そのまま相手はゆっくりとボールを回し、ビルドアップしていく。

相手のセンターバックからトップ下へ縦パスが入ってしまった。そのトップ下は綺麗なターンを見せると、ミーティング通りの中央突破を仕掛けてくる。華麗な時にはフェイントを織り交ぜながらスピードで相手を置き去りにする。そして、DFライン最後の侑汰と対峙する。相手はエラシコで抜きにくるが、侑汰は粘り強く追いすがる。それが功を奏したのか、相手は苦し紛れにシュートを打つもボールはゴールの上を越えていった。

その後は中盤で一進一退の攻防が続き、時間だけが過ぎていく。乃木高校も何度かチャンスを作るが、ものにできていなかった。それは相手も同じだが1点のリードがあるからか、余裕を持ってプレーしていた。

やがて第四審判から前半のロスタイムが表示される。ロスタイムは1分。試合はちょうど巧輝が相手のパスをインターセプトしたところだった。

巧輝はボールを奪ってパスコースを探すが見つからず、ドリブルを選択する。ゴールへ一直線にドリブルをする。時にフェイントを織り交ぜながらスピードで相手を抜き去る。

『自分たちがやられて嫌なプレーは相手もやられると嫌なプレーだ』
中学時代のサッカー部顧問だった先生の口癖だ。ふとこの言葉を思い出した巧輝は相手のトップ下と同じようにドリブルをする。相手は追いつくのに精一杯で、巧輝からボールを奪えない。苦し紛れのスライディングも巧輝は余裕を持ってかわす。

ミドルレンジからのシュートコースが巧輝の目に映る。巧輝は躊躇すること無く、シュートを選択。コースはゴール右上の隅。狙いすましたシュートはゴールへ。しかし、相手のキーパーは辛くもパンチングでボールを弾く。弾いたボールはゴールラインを割り、右からのコーナーキックになる。

コーナーキックのキッカーは巧輝。ゴール前には賢吾、雪弥、侑汰がポジションを取るために相手とぶつかり合う。巧輝が手を上げてボールを蹴り込む。ゴールから遠ざかる、キーパーには飛び出しにくいボールだ。
ボールはファーサイドの賢吾目がけて飛んでいく。賢吾は相手と競りながら、ボールを折り返す。折り返した先にいたのは侑汰。やってきたボールを胸でトラップしてボレーシュート。しかし、シュートはキーパーのファインセーブで決まらなかった。
そのプレーを見た主審は前半終了の笛を長く吹く。

ハーフタイムのベンチにはどんよりとした重たい空気が流れていた。
設楽「まだ後半があるから、追いつくことは出来るぞ。最後の攻撃の形は凄く良かったぞ!相手の嫌がるプレーをしろ。相手のミスを誘え。ミスからの失点となれば、相手の士気はダダ下がり。そこを一気にたたくぞ。」
「はい!」 全員が返事をする。

設楽「後半も同じメンバーで行くぞ。ポジションは試合中に少し変えるかも知れんが、割と自由にプレーしてもいい。決まりきったことばかりやってると相手にもわかりやすいプレーになってしまうから、そこは注意するように」

ハーフタイムが終わり、乃木高校のキックオフで後半が始まる。

■筆者メッセージ
第41話更新します。
とても長くなってしまって申し訳ありません。まだ後半始まってません。8月編は何話になってしまうんだろうか…?不安だらけです笑

さて、感想ください!!お願いします!

閲覧数が1万超えました!本当にありがとうございます!凄く嬉しいです。これで満足することなく、これからも精進していきたいと思います。今後も、この『僕等のあのあの日々』をよろしくお願いします!
Hika ( 2016/03/08(火) 11:10 )