高校2年生6月
第27話
前半を1-0で折り返した乃木高校。ハーフタイム、ロッカールームにて設楽先生から指示が入る。
設楽「巧輝のアイディアは素晴らしかった。雪弥もよく対応した。後半もこのまま行く。ポジションは4-5-1を崩すな。要所要所で雪弥と侑汰が入れ替わって前線に入れ。後半は追加点入れて、勝ち切るぞ!」
そう言って再び円陣を組んだ。

後半になって、各チームの選手がそれぞれのポジションに散る。後半のキックオフは乃木高校。巧輝からボールが侑汰へ下げられる。侑汰はダイレクトで俊へとボールを渡す。ボールを受けた俊はパスコースを探しながらドリブルでキープする。賢吾へのパスコースが開き、そこへ地を這う早いボールを送る。
そのボールを賢吾はトラップするのではなく、左足のインサイドに当てて巧輝へボールが行くようにボールのコースを変える。
相手は2人のプレーに対応できず、置いてけぼりにされる。
巧輝にボールが通る。上がってくる雪弥に1度ボールを落とすと、背負っていたDFとポジションを入れ替えて前へ走り出す。
雪弥は巧輝と意思疎通ができていたようで、落とされたボールにバックスピンをかけてダイレクトで巧輝の前へ送る。
完全にフリーとなった巧輝。そのままシュートも打てたが、コースが狭い。他の選手の上がりを待つようにキープする。巧輝の横を走り抜けていく賢吾。その賢吾へヒールパスを送る巧輝。ドンピシャのタイミングで来たボールに賢吾はトラップすることなく、そのままシュートを放つ。ネットが揺れる。後半開始早々の追加点。これで2-0と第二高校を引き離す。相手を完全に崩した素晴らしいゴールだった。

その後は攻め込まれる時間帯が長く続いたが、雪弥と侑汰が入れ替わって前線へ入ることによって何度もパスカットできていた。危ないシーンも無く、順調に試合は進んでいく。

しかし、相手はここで交代のカードを切ってきた。DFを下げて、長身のFWを投入する。そこからはDFラインから、ボランチから、どこからでも長身のFWめがけてロングボールがやってくる。これには前線に賢吾を残す以外は全員がこぼれ球に対応できるよう、自陣に戻らざるを得なかった。

後半ロスタイム、侑汰と長身のFWがボールめがけて競る。ここで主審の笛がファールを告げる。侑汰の長身のFWに対するファールだった。しかも、ペナルティーエリア内。PKとなってしまう。

相手のキッカーは先ほど交代して入ってきたMF。ボールをプレースしてゆっくりと助走をとる。巧輝たちはおうぎ形になり、こぼれ球をクリアするために準備をする。
キッカーがゆっくりとした助走を開始する。ゆっくりとした助走は急にスピード上げた。キーパーはそれに驚き、反応が一瞬だけ遅れる。キーパーが放たれたボールに向かって飛ぶも、間に合わず。ボールはネットを揺らす。2-1。まだ優位にはいるが、非常に危ない状況だ。

後半の時間はもう、ドームの電光掲示板には出ていない。ロスタイムもそろそろなくなるはずだ。しかし、気を抜いた瞬間にやられる。そう思った巧輝は気合を入れ直して、プレーを再開する。

巧輝の元へボールが転がってくる。巧輝はライン際に寄って、キープして時間を稼ぐ。後ろから倒され、笛が鳴る。ファールの笛だ。巧輝はさっさとリスタートさせ、前線へとボールを蹴り込む。
『早く、終われ 審判、時計を見てくれ!』
巧輝のその思いが通じたのか、主審は時計を見る。そして、主審が笛を咥え、笛を鳴らす。試合終了。結果は2-1。

巧輝はまっすぐにベンチへと走っていく。他のメンバーもつられてベンチへと走る。そして、ベンチメンバーと喜びを分かち合う。
設楽「よくやった!お前ら!」
設楽先生のその目には涙があった。
侑汰「とりあえず、インターハイは出場決定だ!!」
侑汰の目にも涙。
巧輝「まだ泣くのは早いですよ しっかりインターハイでも勝ちましょう!」



メンバーは歓喜に包まれたまま、ドームを後にする。
巧輝が帰宅すると、玄関に靴がたくさん並んでいた。案の定、リビングの扉を開けると、乾いた破裂音とともに紙テープが舞う。
「インターハイ出場、おめでとう!!」
そこには、姉、美彩、麻衣、それに七瀬、奈々未、日芽香がいた。
巧輝「奈々未、日芽香どうやって先回りしたんだよ?」
奈々未「内緒よ内緒 ね?ひめたん」
日芽香「そうですね」
そう言って2人は笑っていた。
巧輝「とりあえず、インターハイ出場は決めたけど、これからが本番だから。 しっかりと勝ってくるから、応援頼みます!」
巧輝はそう言って締める。そして、巧輝は自分の部屋へと向かう。リビングでは各々が会話を始める。

巧輝が部屋に戻ってエナメルバッグの中身を片付けていると、部屋の扉が遠慮がちにノックされる。
巧輝「どうぞ?」
七瀬「巧輝君、おめでとう!」
巧輝がドアの方へ行くと、ドアが開いて七瀬が入ってくる。と同時に七瀬は巧輝に抱きつく。
七瀬「巧輝君が怪我した時、もうどうしようかと思った」
巧輝「ごめん、心配かけて」
七瀬「ううん。 良いの。 ちゃんと試合にも勝って、約束守ってくれたから」
巧輝「あぁ、約束、守ったぞ」
そう言って巧輝は七瀬を固く抱き締める。
七瀬「これで、付き合えるね これから、よろしくお願いします」
巧輝「そうだな こちらこそ、よろしくお願いします」

そこへ奈々未がやってくる。
奈々未「あらら?お2人さん、固い抱擁を交わしてますが?」
おどけてそう言うと、2人とも顔を赤くして離れてしまう。
奈々未「なんだ、離れちゃうんだ つまんないの」
巧輝「勝手に人の部屋入るなんて、非常識だぞ!」
奈々未「私は、麻衣姉ちゃんに巧輝の様子見てきてって頼まれただけだし、第一扉が開いてるのが悪い!」
奈々未がそう言うと、巧輝は何も言い返せなかった。
奈々未「でも良いじゃない? これで晴れて2人はカップルね」
七瀬「うん!」
七瀬が嬉しそうに言う。

その時、下から姉ちゃんの声がする。
深麻「巧輝〜 早く降りてきなさーい?」
美彩「女の子2人部屋に連れ込んで何してるの〜?」
美彩からは明らかに悪意のある声が。
巧輝「今、行くー あと、変なことなんかしてないぞ〜!」
そう言って、部屋を出ようとする。すると再び下から美彩の声。
美彩「まいやんが私も混ぜて〜って言ってるよ〜」
白麻「言ってないよ!」
全否定の声も聞こえてくる。

そんなこんなでみんなが帰り始める。もちろん、帰る前に奈々未が
奈々未「巧輝と七瀬が付き合い始めたって」
と、余計な一言で爆弾を放り込んできたが。

巧輝「じゃあ、また明日な七瀬」
七瀬「うん! また明日、巧輝君」
そう言って別れる。

その夜、姉の麻衣に問い詰められたり、賢吾の姉の麻衣や日芽香から問い詰めるメッセージが来たのは別の話。

■筆者メッセージ
これで、めでたく高2・6月編終了です。
じゅーすさん、こーきさん、感想ありがとうございます!大変嬉しいです。
要望の若月佑実ですが、まだどこで出すか決まってません汗どうか気長に待っていただければと思います。
Hika ( 2016/02/13(土) 14:27 )