高校2年生6月
第25話
先ほどの東山第四の試合を見た後に少し、食事をする。もちろん、すぐにエネルギーに変わるものを。

賢吾「次の相手は東山第四か…」
俊「かなり厳しい試合になりそうだね」
巧輝「あぁ、でもさっき見てたら中盤の10番にボールを集めてそこから攻撃っていう形らしい」
雪弥「じゃあ、そこを叩けば……」
侑汰「いや、あの10番はかなりのテクニックを持ってたからかなり難しいだろうな」
巧輝「10番は多彩な攻撃のオプションを持ってるからな 10番にボールを持たれると辛いな」
賢吾「じゃあ、どうやって抑えるんだよ?」
答えは出ないままだったー

東山第四との試合は18時キックオフ。この日の最終試合だ。すでにピッチの照明には灯が入っていた。

設楽「相手は東山第四だ。 気づいたやつもいると思うが相手の10番にボールを集めるのがセオリーだ。そこで、ここに2人マークを付ける。チャレンジとカバーをしっかりと意識してやってもらいたい。布陣は4-5-1でボランチを2枚置く。ボランチは巧輝と侑汰でやれ。トップ下は雪弥。賢吾がワントップだ。まずはこの山を越えて明日のドームに向けて、良い形で終われるように勝つぞ!」
全員が大声で返事をする。

18時に向けて、両チームがアップを開始する。今日お互いに2試合を終えているため、少し選手の動きは鈍いようだった。

選手が入場する。キャプテンの侑汰がセンターサークルに残り、相手のキャプテンと握手を交わし、コイントスが行われる。キックオフは東山第四高校に決定する。両チームのイレブンはコートに散らばっていく。

主審の笛が試合開始を告げる。相手の布陣は3-4-3。守るときは両サイドハーフが下がり、ウィングバックのようになる布陣だ。この布陣だと、両サイドハーフと両サイドのFW陣の運動量がとてつもなく多くなる。

東山第四はキックオフから、センターバックへとボールを1度下げる。センターバックからボールは中盤に張っていた10番へとボールはパスされる。しかし、巧輝がそれをカットする。巧輝から1度サイドバックの俊へボールを下げ、DFラインとボランチでボールを回し、ビルドアップしていく。

俊にボールが回ってきた。俊から雪弥へと縦パスが1本入る。ワントップの賢吾が動き出し、ボールを受ける。走りこんできた巧輝にボールを落とす。巧輝はボールを受け取ると、ワンタッチ目でボールを自分の右側に置く。そして、ゴールから遠い位置からロングシュートを放つ。ボールはキーパーの手許で落ち、ゴールを揺らす。先制点は乃木高校。

それからは中盤で攻守が激しく入れ替わる。その混戦の中、10番にボールが渡ってしまい、裏へのボールを警戒したサイドバックが中へと絞る。しかし、ボールは10番から左サイドに張っていたFWにボールが渡ってしまう。そこからすぐにゴール前へアーリークロスが上がる。両センターバックは反応できず、相手のセンターフォワードにヘディングシュートを打たれる。ボールは強く地面に打ちつけられ、コースが変化する。その変化にGKは対応できず、今日初めての得点を許してしまう。1-1同点に追いつかれてしまった。

前半終了間際、再びボールが相手の10番に渡る。今度はパスではなく、ドリブルでゴールに向かってくる。多彩なステップでDFを抜き去っていく。キーパーと一対一となり、落ち着いてシュートを10番が放つ。誰もが逆転を許したと思ったその時、俊がシュートをスライディングで防ぐ。そのボールはゴールラインを割り、相手のコーナーキックとなる。
相手の10番からボールがゴール前に入ってくる。相手の背の高いFWが高い打点でヘディングを狙う。しかし、届かずにFWの頭の上を越えていく。そこにいたのは相手のセンターバック。相手は確実にトラップをしてからゴールへボールを押し込む。
前半終了間際、相手の得点を許し逆転されてしまう。そして、主審の笛が鳴る。前半を1-2と、リードされて折り返す。

この試合を見ていた七瀬は心配になる。
『巧輝君たち、勝てるかな……? いや、勝てるって信じてなきゃ!』

その思いは巧輝の姉である、麻衣たちも同じであった。
真夏「侑汰……頑張ってよね」
白麻「巧輝君、大丈夫だよね……?」
美彩「私たちが信じてなきゃ、勝てるものも勝てなくなるよ!」
深麻「みさみさの言う通り!ちゃんと信じなきゃね」
真夏・白麻「そうね」

その頃、ベンチでは……
設楽「まだ行けるぞ!2点取られてしまったが、巧輝と侑汰で10番を抑えることができてきてるぞ。この調子だ。後は、少ないチャンスをしっかりものにすること。攻撃はシュートで終われ。カウンターに警戒しろ。コーナーキックはもう仕方がない忘れろ。この後を考えろ。」
ここで設楽先生の話は終わる。それからは選手同士のミーティング。
侑汰「巧輝、お前の決定力は前線に必要だ だから、雪弥とポジションを変えろ 雪弥のDFはしっかりしている。俺もいるから、安心して前線に入れ」
巧輝「わかりました じゃあ、雪弥に伝えてきます」
侑汰「あぁ、頼む」

そうして、後半開始の笛が鳴る。
巧輝からボールはボランチに下がった雪弥へパスする。雪弥はボールを受けて、前線を見る。しかし、賢吾にはしっかりとマークが付いていて、マークを外せないでいた。パスする先を迷い、右サイドのMFへパスする。そこからドリブルを試みるもあっけなくボールを取られてしまう。取られたボールは10番にパスされる。雪弥と侑汰がアイコンタクトして侑汰がボールをカットしに動き出す。それを見た10番は体を入れて、侑汰を防ぎつつボールを流してターンしようとする。雪弥は流れたボールをカットし、相手のDFが前へ意識がいっている間にボールをDFラインの裏へスルーパスを送る。賢吾がボールに反応する。
しかし、
巧輝「賢吾!触るな!!オフサイドだ!」
巧輝の声に賢吾が反応し、少しバックステップをして戻る。線審の旗が上がりかけたが、旗はそこで止まる。

ボールは転々と転がっていく。そのボールに追いついたのは巧輝。後ろから猛追してくるDFを交わし、ペナルティーエリアに侵入する。そこで後ろからDFにスライディングを受ける。巧輝の右足に衝撃が走る。そのまま倒れ込む。遠くから聞こえてくる主審の笛。PKになったようだが、巧輝は起き上がれない。

奈々未と設楽先生が走ってやってくる。右足にコールドスプレーをかけてもらう。
設楽「大丈夫か?巧輝」
奈々未「大丈夫?」
巧輝「行けます! PK、蹴らせてください」
設楽「よし、行ってこい!」

巧輝が倒されると、試合を見ていた七瀬や麻衣たちに動揺が走る。
『巧輝君、大丈夫だよね? 頑張って!』

白麻「巧輝君!!」
深麻「大丈夫よ、巧輝なら立ち上がる」
美彩「そうね、信じましょ?」
真夏「きっと大丈夫よ」

巧輝が立ち上がると、七瀬や麻衣たちから拍手が起こる。巧輝はペナルティーマークにボールをプレースする。そして、少し長めの助走を取る。そして、全速力で助走を開始する。相手のGKはゴール右隅のグラウンダーのボールだと思ったのか、ジャンプをする。しかし、急に巧輝はスピードを緩め、ボールはふわりとゴールのど真ん中に吸い込まれていった。これで2-2。同点に追いついた。

東山第四高校のキックオフから試合が再開される。ボールが10番に下げられる。10番に雪弥がプレスをかけ、侑汰がカバーの位置に入ってくる。10番は仕方がなくボールを1度下げる。下げられたボールを賢吾が追う。それを見た相手センターバックがロングフィードを前線に送る。しかし、侑汰がボールをカットする。
そのままボールを雪弥に渡して、侑汰もポジションを上げる。雪弥から賢吾へのパス。ボールは通り、賢吾は侑汰へボールを落とす。侑汰はダイレクトでバックスピンをかけたボールを巧輝に送る。ボールは巧輝の前で止まり、巧輝がそのままドリブルに入る。
しかし、さっきの怪我の影響かいつものキレとスピードが無い。相手のDFに容易に追いつかれ、一対一となる。巧輝はダブルシザースでDFを辛くも抜き去ると、そのままシュート態勢に入る。
しかし、このままでは右足でのシュートになってしまう。直前で気づいた巧輝はキックフェイントに切り替え、右足を軸足にして左足を振り抜く。

ボールははち切れんばかりにネットを揺らす。3-2。逆転に成功する。しかし、ここで巧輝の限界がやってくる。
それに気づいた設楽先生は巧輝と3年のボランチを交代させ、侑汰をDFラインに下げ、俊をボランチに、雪弥をトップ下にポジションを入れ替えさせる。

残りの5分を凌ぎきれば、勝利。そこで、設楽先生は3年のMFを下げ、3年のDFを投入し、5-4-1に布陣を変える。

その後は東山第四高校の猛攻を受けるが、辛くも弾く。そして、後半ロスタイムに突入する。時間は1分。
雪弥のもとにボールがやってきた。雪弥は相手のコーナーフラッグめがけてロングボールを蹴る。それを見た主審は笛を鳴らす。

結果は3-2。東山第四高校との試合は死闘となったが、辛くも勝利を収めた乃木高校。明日のドームでの準決勝へと駒を進めてこの日は解散する。

■筆者メッセージ
すごく長くなってしまいましたね汗
まだ準々決勝……頑張ります
Hika ( 2016/02/12(金) 22:52 )